5月14日、本田技研工業(以下ホンダ)の決算が発表された。
ちなみにこの発表対象の期は2020年4月から2021年3月までだが、呼び方には会社によって2派ある。
- 2021年3月期派:トヨタ、スズキ、マツダ、SUBARU
- 2020年度派:ホンダ、日産、三菱
ややこしいが指しているものは同じで、記事を書く側としては結構困る。7社の原稿でこれを対象企業の呼び方に準じて使い分ければ、記事によって表記が揺らぎ、読者が混乱するし、かと言って例えば2021年3月期で統一すると、今回のホンダの記事に入る図中の表記とは整合しない。
さらに言うと、決算は2021年3月末で締められ、すでに4月1日からは今期が始まっている。発表は毎年5月なので発表したてのホヤホヤの決算期はすでに「前期決算」で、前年と比較する場合、それは「前々期決算」となる。「日経ビジネス」を読む方ならば、最新の決算分析を読みながら「前期」と言われても「ああ、この発表の期ね」とスルリと頭に入るのだろうが、世の中、日経を読み慣れた人ばかりではない。とくに「前期」という単語が普遍的すぎるというか「会計用語感」が皆無だから、気づかないと混乱するのだ。
というあたりを毎度頭を悩ませつつ編集者にも相談しているのだが、そこは日経だけあって媒体としてのルールは厳格、「正しい用語を使わねばなりませんので……」と揺るがない。読み手の方で慣れてくれというスタンスとも言える。まあ正しい。
でもねぇ、混乱するだろうと分かっていながら、読み慣れていない人にトラップを仕掛けるのはよくないよ、と思い、マツダの回からできるだけ「2021年3月度」と開いて書くようにした。冗長だとは思うが、それはこれだけ長々とした理由があるのだ。
ということで、そんな決算書特集もこれが最終回。トリはホンダである。
生産能力拡大からスタート
ホンダがここしばらくどういう経営をしていたかと言えば、2009年から2015年まで社長を務めた伊東孝紳氏が年産600万台構想を立てて、中国を中心に工場の建設や能力向上を推進した。就任時の生産台数は330万台で、直近のピークは07年の395万台だった。
トヨタが2000年ごろからの約10年で、500万台からほぼ1000万台までジャンプアップを果たしたという前例に鑑み、伊藤社長は一気に600万台を狙い、あわよくばそのまま1000万台へと考えたと思われる。それは「野心的ではあるが、荒唐無稽とまでは言えない」、それなりに筋が通った戦略だった。
しかし、問題は車両の開発に先んじて生産拠点の拡大から着手したところにあり、この結果、拡大した生産設備を遊ばせないために、車両開発のペースが極端に煽られる事態に陥った。
いまから後知恵で言えば、マツダやトヨタがやったように、設計の合理化を先に進めるべきであったと思う。ちょっと脱線して、エンジンを例に「設計の合理化とは何か」を簡単に解説する。
エンジンの性能は一義的には燃焼で決まる。では燃焼を左右する設計要素は何だ、と考えれば、影響の大きさに基づいて大事な順に抜き出すことができる。
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