どうしてこんなことになっているかといえば、これは、この10年ほど、マツダが構造改革に取り組んできた結果だ。2012年に発売された初代CX-5から、マツダはブランド価値を高める販売政策を開始した。CX-5を皮切りにした第6世代のモデル群で、値引きを抑制して、下取り価格の高値維持化を図った。それは続く第7世代でさらに加速された。デザインや性能を向上させ、中古価格を高値に維持することで、ロイヤルティーユーザーの買い替え時に下取り車として購入資金源の一部となる所有車の価値を守ろうとしたのである。

 これは、日本マーケットでは比較的順調に進んだが、北米ではなかなかうまく回らなかった。苦しんだ販売店の声に押されて、結局は販売奨励金を使って利益率を落とし、同時にブランド価値を落とすという流れを行ったり来たりしていた。

 ここを解決するためには、「いずれ高利益率の車をガンガン売れるようになる、だから目先、値引きして売るのは我慢しよう」と、北米の販売店に思ってもらわねばならない。信頼関係の構築が極めて重要だ。そして高付加価値の(要するに他社より高い)クルマを売るためには、ディーラーの内外装のリニューアルなど、販売店側の投資も必要だ。

 販売店にとっては、マツダを信じて店を大改装した後に、例えば「北米撤退」でも決定されたら目も当てられない。我々から見れば、マツダの北米撤退などあり得ないが、現場で実際に事業に投資する人たちは、やはり疑いを捨てきれない。

北米工場とラージプラットフォームが成否を握る

 そこでマツダは、トヨタと共同で、北米に新工場の建設を決定した。これは重要なキーストーンである。第1に、北米ディーラーにマツダのメーカーとしての北米に懸ける本気度を示し、彼らに安心して攻めの投資を行ってもらえるようにすること。そして2つ目は、北米の主力モデルとなるラージプラットフォーム(利益率の高い大型の車体)を効率良く造れる最新工場を、需要の中心である北米に確立すること。この両面で将来に効いてくるからだ。

 ということで現在マツダは、当初21年9月稼働予定と発表された北米工場への投資と、そこで造られるラージプラットフォームへの投資を同時に進めなくてはならない。両者は密接に絡んでおり、どちらもおろそかにできないのだ。コロナ禍の影響で、それらのスケジュールはずれ込む可能性ありとの噂はあるが、いずれにしてもそれらの投資は今まさにピークであり、そうした未来へ向けた重要な投資の結果が、利益率予想の数字を直撃しているのである。

 マツダの今期は、業績回復に加え、今後数年間かけて目指す利益率改善の基盤を築く大切な年だ。筆者から見ると、そろそろ神様もマツダに追い風を吹かせてやってもいいころだと思うのだが、果たしてどうなるのだろう。努力の後は、やっぱり「勝利」となってほしいところだ。

マツダの稼ぎ頭、CX-5。ラージプラットフォームへの移行が囁かれている。(写真:マツダ)
マツダの稼ぎ頭、CX-5。ラージプラットフォームへの移行が囁かれている。(写真:マツダ)

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