最近のマツダの決算を見るたびに、どうもツイてないなぁと思う。一心不乱に考えて、作戦を立て、頑張って実行したその末に、積み上げたプラスが想定外の不可抗力で吹き飛ぶ。そんな状況を何度見てきたことか。
一番頻繁にやられるのは為替である。という話の流れの中で言い出すと混乱するかもしれないが、実は為替に関して、国内メーカー中で最も対策が進んでいるのはマツダだという意外な一面がある。
トヨタも感心するマツダのドル円対策、なのに
マツダは対ドルの為替変動に対してほぼ完全にニュートラル。それはつまりドル円レートが上がっても下がっても為替利益も差損も発生しない仕組みができあがっている。
それについては、かつてトヨタの財務系の幹部が「マツダさんのあのドル円ニュートラルはスゴいですよね」と感心していたくらいである。
要するに、ドルでの売り上げに対して、ドル建てでの支払額を上手にコントロールして、「ドルを円に換えずにお買い物で使い切ってしまう」オペレーションをやっている。お見事である。自らの戦術で為替への対策をこれだけやっている国内メーカーは筆者が知る限りだが他にない。
面白いことに、というと怒られるかもしれない、にもかかわらず、マツダは体質として為替の変動に強いかといえば逆に弱い。これはマツダのマーケット比率の特殊性によるものだ。日、欧、米、中、その他(主にオーストラリア)のマーケットが、ほぼ20%ずつキレイに5等分されているのが原因だ。
それだけバランスがいいと、ドル円だけが解決されてもダメなのだ。見ていると、欧州とオーストラリアで翻弄されるケースが多い。ユーロとオーストラリアドルが荒れるとマツダは熱湯風呂みたいなことになってしまうのだ。それで為替耐性が低くなってしまう。
例えばオーストラリアあたりは同国の10%、トヨタに次ぐシェアを持っているのだから、現地で製造した方が……、となるのだが、あの国からはすでに世界中全ての自動車メーカーが撤退済みで、サプライヤーすら存在しない。となれば日本から輸出するしかないし、そのお金で現地でお買い物をしようにもサプライヤーもないので、買う物がない。買うとすればボーキサイトくらいだが、「買ったとして、金属素材メーカーにアルミ地金とボーキサイトで物々交換する形にでもするんでしょうかね」と、マツダの人は苦笑いする。
いきなり為替の話題から入ったけれど、決算の成績はどうだったのか?
例によって億円単位でまとめられた数字は慣れてないと読みにくいので、分かり易く書き直しておこう。矢印を挟んで2020年3月期→21年3月期、そして差分である。
- 売上高は3兆4303億円→2兆8821億円でマイナス5482億円
- 営業利益は436億円→88億円でマイナス348億円
- 一行飛ばして税引き前利益が493億円→22億円でマイナス471億円
- 売上高営業利益率は1.3%→0.3%と1.0ポイントダウン。
連結出荷台数を抜き出しておこう。
- 123万2000台→99万台で24万2000台ダウンだ。
ということで主要指標のみならず、ほぼ全ての指標がマイナス。減収減益の決算となった。ただし、それではダメダメなのかといえば、筆者はそうは思っていない。
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