売り上げ増・減益の背景

 だが、2Q以降、営業利益が漸減しているところは少し気になる。要するに売り上げと利益が反比例するかのように推移しているのだ。常識的には、サプライチェーンの毀損によって、部品や原材料の調達価格が上がっていることが原因だと考えられる。ただし、それでも20年3月期の利益率の並びよりいい。ここも不可解である。

 スズキの企業広報に問い合わせたところ、次のような説明だった。まずはやはり主要因は原材料だ。特にロジウムなどの原材料価格が期を追うごとに高騰したことが大きい。さらに、3Qまでは為替の円高も減益要因となった。為替そのものは4Qには円安に振れて増益となったのだが、別途品質関連費用の発生と、販売回復に伴う輸送費など、売り上げに比例する費用が増加した。これらによって売り上げが増加しつつも減益要因になった。さすがにこれだけ要因が複合的に重なると決算書だけでは読み解けない。

 ちなみに、少しややこしいが、「売り上げが増加しつつも利益が減じた」のだが、その減じたはずの利益が20年3月期の並びとの比較では高い理由も考察しなければならない。原材料高騰で利益が落ち込んだのであれば、21年3月期の後半で出費が増え、同期比で低くなるはずである。そういう不思議なことが起きた理由は、前々期に品質関連費用が発生して利益が毀損していたという特殊要因があったことに加え、日本マーケットで1台当たりの単価が上がったことも効いている。まことにややこしい。

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 毎度同じことを書いて申しわけないが、この「営業利益増減要因」が、決算の分析で最も重要な資料だ。例によって左の柱が20年3月期の営業利益で右の柱が21年3月期期営業利益。その差、マイナス207億円に着地する過程が示されている。

 左から、まずは「諸経費等の減」。これがプラスの734億円。コロナ禍と見るやあらゆる蛇口を一気に閉めて経費を絞った。スズキの人はときどき自嘲気味に「どケチ経営」と言うが、要するにしっかり者なのだ。

 彼らの主戦場は軽自動車。価格が命だ。もちろん品質は大事だが、まず安くなければダメだとは、鈴木修会長(今年6月から相談役)が社長時代から口を酸っぱくして言い続けていることで、つまりは良品廉価はもちろんだが絶対価格が安いこともまたマスト。むしろそちらが優先される。

 「ウチの客は貧乏人。高ければ買ってくれない」という言葉に込めた「ずっと庶民の味方であり続ける」というすごみを感じる部分である。その「どケチ」を遺憾なく発揮して諸経費を減らしている。

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