(決算特集での用語の使い方、全社共通の概況などは第1回を→「2023年3月期、自動車会社に吹いた追い風と逆風」)
厳しい原材料価格高騰の中で、三菱自動車(以下三菱自)は増収増益の決算を発表した。好業績と言っていいだろう。これに伴い前期(22年3月期)および前々期(21年3月期)と2期連続で無配となっていた1株あたり配当も5円付いた。ちなみに今期(24年3月期)の見通しでは2倍の10円を予想している。
この連載を読む人にとって配当はおそらく興味の対象ではないと思うし、筆者もこれまで記事化した記憶がない。が、しかし、株式会社が無配というのは明らかに健康な姿ではない。三菱自が配当できる状態に戻したのは、今回の決算にとってもある種象徴的な出来事だと言える。
さて、いつものごとく、主要な数字から見ていこう。
販売台数(カッコ内は対22年3月期、以下同):83万4000台(89.0%)
売上高:2兆4581億円(+4192億円)
営業利益:1905億円(+1032億円)
営業利益率:7.7%(+3.4ポイント)
当期純利益:1687億円(+947億円)
台数こそ11%ほどダウンしているが、その他は全てプラス。どこからも文句の付かない見事な数字である。となれば、その成績をどうやって達成できたのかが興味の対象になる。
台数減の中で利益が大きく改善
左端の柱が前期(22年3月期)、右端が当該期(23年3月期)の利益を示している。三菱の資料では「台数」と「MIX/売価」(構成)を別々に出してくれているのはありがたい。これで見ても分かるように、「台数」がマイナスであるにもかかわらず「MIX/売価」で大きくプラスに持っていっている。
言うまでもなく、売り上げは、台数×単価で決まる。「MIX/売価」が良いということは単価が高いということで、一般的には、顧客に「より上の車種」、あるいは「同一車種でも高いグレード」が売れたことを意味する。モデルチェンジ、値上げなどもまた「MIX/売価」の要素である。
普通に考えれば、商品に対する顧客の納得度が高いからこそ財布のひもが緩むのであり、評価の高い商品を造っている証拠の一つになる。自動車メーカーとしてこれはビジネスの源泉部分なので、「MIX/売価」での大幅な利益増は非常に喜ばしい事態である。
また「販売費」も利益貢献面でプラスになっており、これは販売店への販売奨励金を節減できたということを意味する。これは前回述べたとおり三菱自に限らない話だが、部品不足で需要に見合う生産ができなかった結果、値引きをする必要がなくなったことが大きいはずだ。
「販売台数」はメーカーにとって大事な指標であり、多いに越したことはないのだが、多すぎて販売に困り、結果として販売奨励金を積み増すくらいなら、クルマが多少足りないくらいの方が、むしろ売り上げも利益も伸びる可能性があることを当該期の三菱自動車の決算は示唆している。
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