今回からしばらくの間、「日本の自動車会社の決算書を読む」シリーズをお送りする(とてもではないが食レポを書いていると間に合わないので、こちらはお休みだ。ご了承頂きたい)。

 5月11日、SUBARU(以下スバル)は2021年3月期の本決算結果を発表した。いうまでもなく、当該期は新型コロナの影響に世界経済が翻弄された時期であり、もとより減収減益を基準に考えるべき経済背景であった。スバルだけではなく、全自動車メーカーが、損害をどの程度に抑えられたのかと、反転攻勢に出る準備が整っているかどうかが問われることになる。

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 さて、結果から言えば、21年3月期のスバルの決算は、減収減益で着地した。主要な数字から見ていこう。

 まず売上収益(売上高)は20年3月期に対して5139億円減の2兆8302億円と15%以上のダウンであった。それは良いのか悪いのか?

 正直判断は難しい。経済背景に特段の問題がないにもかかわらず売上高が15%もダウンしたとしたら経営陣退陣級の危機である。そもそも人類史上未曾有の危機であるコロナ禍を何と比べたらいいのかの判断が付かない。仮に1929年の世界恐慌と比べるのだとしたら、「大」をいくつ付けても足りないくらいの大成功だろう。

個人的には“大健闘”

 筆者個人としては、マーケットをグローバルに分散的に持たず、「北米一本足打法」と長らくいわれてきたスバルが、その利益の源泉である北米が世界の中でも甚大な新型コロナの被害を被り、ロックダウンも行われた環境下であることを考慮すれば、この程度の減収で抑えたことは大健闘と受け止めている。

 さて、売り上げはダウンしたわけだが利益はどうか? 営業利益を同様に比べると、20年3月期比で1079億円ダウンの1025億円。こちらは半減である。「売上高が15%しか下がってないのに、利益は半減ってヒドいな」と考えたら、もちろん間違いだ。

 売値1000円の商品を600円で10個仕入れた場合。完売すれば利益は4000円だが、8個しか売れない場合どうなるか? 仕入れ6000円に対して、売上は8000円。つまり利益は2000円に半減してしまう。売上減は、損益分岐点を挟んで乗数的に効いてくる。変な言い方だが「10個のうちの最後の1個」が一番利益率が大きいのだ。

 売れないなら仕入れなければいいじゃないか? というご意見もあろう。小売りならそれが成り立つケースもあろう。しかし自動車産業は製造業で、製造業の原価というのはものすごく乱暴に言えば設備投資である。工場設備への投資は、リクープまでに20年はかかる。逆に言えば20年分の投資は既にしてしまっているので、今年突然感染症が発生したからと言って、取れる手段は限られている。いじれるパラメータが少ない中でよくぞここまで戦ったといえるのは、通年の営業利益でしっかり1025億円のプラスにしているからだ。

 具体的に「どの市場でどのくらい売れなかったのか」は、販売台数ベースの資料から分かる。スバルの資料は毎度パーセンテージが入っていないのが極めて不親切なので、筆者が別途対前年比を加えてシートを作成した。

続きを読む 2/4 米国市場が意外に早く復活した

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