トヨタの場合、それはざっくり言って以下のようなスパンで計画されている、と思う。あくまでも筆者の見立てではあるが、上述した通りの取材を重ねてのイメージである。

・直近(今後数年間)の目標
HEVおよび、PHEV(プラグインハイブリッド車、充電器などから充電できる)、EVの発表発売および、バイオエタノール燃料のブラジル以外への普及

・2030年までの短期目標
HEVおよび、PHEV、EVの車種数・生産数量拡大と純内燃機関車の段階的削減。

・2030~2050までの中期目標
エネルギー利用の効率化とHEVの段階的縮小、代わってPHEV、EVの普及拡大と、FCEVマーケットの育成、水素インフラとCN燃料インフラの拡大。商用車領域のFCEV拡大。交通インフラの改善と自動運転などによる輸送効率の向上。

・2050年までの長期目標
PHEV、EV、CN燃料で動く内燃機関、FCEVの、自由競争による自然淘汰バランスでの普及。

 スゴく簡単に言えば、EVの健全な発展拡大を進めつつ、EVだけではカバーできない領域を、向こう30年の時間軸の中でHEV、PHEV、FCEV、CN内燃機関などに割り振り、インフラ状況を勘案しつつ入れ替えながら、並行して育てていく、ということだ。

EVがモノになるまでの間をどう繋ぐ?

 短期で100%EV化するためには、グローバルなバッテリーの原材料調達の問題が明らかに追いつかない。トヨタは自社分として2030年分まですでにちゃっかり確保済みだが、とは言え、グループ1000万台を全部EV化するには足りないし、2050年時点の全生産予測台数に対して、100%の原材料調達計画が完成している自動車メーカーは1社もない。グローバルトータルの話としては、原材料調達に何らかの奇跡が起きたとして、その上で夢見がちな予測を立てても調達率50%が限界だ。それには2020年比で10 倍の資源確保とバッテリー生産設備が必要なのだ。次善の策を用意するのは社会的使命を考えれば当然の話なのだ。

 結局、バッテリーの能力向上と価格低減の2つが進まない限り、次世代のトランスポーテーションとして、EVのポテンシャルの全てを発揮することはできない。
 そこまでの間をトヨタはどう繋ごうと考えているのか。注目すべき点はここだ。

 この部分について総合的な説明がなされたのは9月7日の「バッテリーデイ」である。ここでトヨタからはバッテリーに関して大きな2つの発表があった。

 1つ目は、長らく大きな期待を向けられてきた「全固体電池」である。トヨタはすでに実走モデルに試作の全固体電池を搭載して走行実験を行っており、その模様は動画でも公開されている。

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 従来の液体やジェルによる電解質の代わりに固体の電解質を使うと、イオンの移動が速くなる。乱暴に言えばイオンの移動が電流なので、電解質の固体化によって出力が向上するとともに、充電も速くなる。つまり、「航続距離の延伸」と「充電時間の短縮」という2つの課題を同時に解決できる可能性が高く、仮にそれが安価に作れるのであれば、現在のEVが抱える問題の多くを軽減できる可能性がある。さらに言えば、劣化にも強いとされてきた。

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