シリーズ
池田直渡の ファクト・シンク・ホープ

池田直渡氏はクルマが好きで人生を賭けてしまった人だが、工業製品、あるいは趣味としてのクルマを基点にしつつ、そのクルマがこうなった経済的、ビジネス的な事情を見たい、という好奇心と、能力を持っている希有な存在だ。かねてライバル媒体での連載を愛読して歯ぎしりしていたが、この度「クルマ好き」のビジネスパーソンが多い日経ビジネス電子版の読者のために、3年がかりで口説き落として連載を受けていただいた。
基本コンセプトは「事実を基点に、論理的に考察し、希望を持って語る」。ぜひご愛読、ご叱正をお願いしたい。(担当編集Y)
61回
-
スズキ、新たなサクセスストーリーが始まる?
ほとんどの日本の自動車会社は、米中の経済変動に多大な影響を受ける。そして当該期の景況はどちらも芳しくなかった。ところが、スズキだけは世界の2大マーケットの動向に全く影響を受けない。
-
米中2大マーケットに翻弄されたホンダの決算
今回7社の決算を並べて比較したときに、ホンダが最も厳しいことを表しているのがこの「税引前利益増減要因」だ。要素を見渡してプラスになっているのが「為替影響」だけで、あとは全てマイナスとなった。
-
長い仕込みを終えたマツダ、賽は投げられた
ここ数年マツダが先行投資を進めて準備してきたモデルが一斉に稼ぎ始める時期に入る。それはそれはめでたい決算にもなろうというものだが、「すでに掛け金をテーブルに高く積み上げてしまった」とも言える。まさかここで負けるわけにはい…
-
不死鳥日産、どん底から羽ばたく
増収増益の決算発表を行った日産自動車は2019年、20年には本当に危機に瀕(ひん)していた。23年3月期決算は、そこからの立ち直り局面であることを念頭に置かないと正しく評価できない。
-
増収減益のトヨタの決算を読み解く
24年3月期予想の営業利益の数字に「3兆円」が掲げられ、従来「消極的だとそしりを受けていた」BEV(バッテリーEV)の販売台数計画も現状の3.8万台から一気に20万台に設定。世の中が少しざわついた。
-
業績好調のスバル、だけど米国の未来が読めない
SUBARU(スバル)の決算は、台数、売上高のみならず営業利益、営業利益率、当期利益の全てにわたってプラスの好結果。増収増益である。スバルのビジネスは、かなりシンプル。主要マーケットは米国、以上。という形は長らく変わらな…
-
三菱自動車、文句の付けようがない好決算とその背景
厳しい原材料価格高騰の中で、三菱自動車(以下三菱自)は増収増益の決算を発表した。好業績と言っていいだろう。これに伴い前期および前々期と2年連続で無配となっていた1株あたり配当も5円付いた。ちなみに今期の見通しでは2倍の1…
-
2023年3月期、自動車会社に吹いた追い風と逆風
当該年度の経営課題はおおむね同じ。それを会社ごとに毎回書くと読む方も大変なので、最初に当該期における各社の経営の背景について、まとめて全体説明をやってしまおうというのが本稿の役割。各社の記事を読む前の全体解説編である。
-
サスの新概念を打ち出したCX-60、その成否は
クルマの「乗り心地」は、ハーシュネスだけで評価すべきじゃない、原点まで立ち返れば別の評価軸があるはず、というのがCX-60の足回りに込められた思想だということは理解できました。しかし、これは相当伝えるのが難しいですよね。
-
CX-60の理想とハーシュネス対策は両立できるのか
CX-60の乗り心地がこれだけ議論を呼んだのは、目指したものと、ハーシュネス(※)対策との優先順位の差、ということですね。では、新しい「乗り心地」と、従来からの対ハーシュネスの性能を両立する方法って、あるんですか?
-
CX-60はコーナリング時の運転の常識にも挑む
普通の人が乗り心地と言ったときに一番気になる低速ハーシュネスがよくないものに対して、それより上の速度域で、しかもこれまで評価軸がなかったところの改善を、トレードオフの関係で納得させねばならない、ということですよね。
-
「全ての乗員が同一に動く」唯一のクルマ、CX-60
既存概念、ラグジュアリーかスポーツかという付加価値の乗せ方ではなくて、我々が目指したのは、ドライバーがまず楽しい、ドライバーが楽しいということを同乗者も一緒に感じられる。かつ、ロングトリップにおいても疲れず、酔わない。
-
CX-60が世の中に提案する「良い乗り心地」とは?
我々は「ファーストインプレッションで、ハーシュネスの受け流しが柔らかいクルマ」の乗り心地を良しとは考えていなくて、ドライバーと、助手席、リヤ席のパッセンジャーが一緒になって楽しめるクルマに仕立てることを考えました。
-
議論沸騰のCX-60、開発者に超ロングインタビュー開始
本邦屈指のサスペンションエンジニアとガチで議論した話を読者にわかるようにまとめ直すのは本当に大変で、途中で心が折れかかったこと数回。なんと、半年近く掛かってようやくまとめ上げたのがこの超々ロングインタビューである。
-
試される日本自動車工業会、雨降って地固まるか
3月23日、日本自動車工業会(自工会)は会見を開いて豊田章男会長の「1年限り」の続投を発表した。途中経過をご存じない方はそもそも報じられた意味が分からないと思うので順を追って説明しよう。
-
謎は解けた! マツダがCX-60のリアサスでやりたかったこと
筆者は尋ねた。「そんなに対地キャンバーの変化とトーコントロールにこだわるなら、いっそド・ディオン・アクスルにすればよかったじゃないですか?」。それを聞いた虫谷さんは画面の中から満面の笑みで言った。「そうです。ド・ディオン…
-
CX-60の記事を書こうとしたらとんでもないことになった
さて、各方面から「どうして池田はマツダCX-60について書かないのだ」という突っ込みを受けまくっていたわけだが、ちょっと本人も困っていた。公道試乗会に出向いたのが9月1日。そこでどうしても納得がいかないクルマの出来を見つ…
-
テスラの「レーダー外し」をつらつら考えてみる
米国の電気自動車メーカー、テスラは、「モデル3」と「モデルY」へのミリ波レーダーの搭載をやめる方針を打ち出した。オートパイロットのセンサーをレーダーとカメラの2系統から、カメラのみのシステムに改めるということだ。
-
クラウン・セダンは水素物流の夢を見るか?
今回のお話はまずクラウン・セダンである。保守的と言いつつテールにノッチバックがないあたりは、ガチガチの保守というわけでもない。はて、しかしこのサイドビューのシェイプはどこかで見たような……。
-
三菱自の急回復、電動化“以外”の戦略も見たい
当期(2022年3月期)の決算において、予想を超えて回復したと言えばまず三菱自動車だろう。正直なところ、筆者はこんなに短期間で数字を立て直してくるとは思っていなかった。お見事である。
WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
おすすめのシリーズ
-
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たや…
-
徹底予測2021年 底打ちか奈落か
日本経済の節目の年として幕を開けた2020年は、誰もが予想できない最悪の1年となった。すべての始まりはコロナ禍だ…
-
クルマ大転換 CASE時代の新秩序
総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
-
不屈の路程
話題の経営者や気鋭の起業家はいかにして自らの経営を確立するに至ったのか。そこにたどり着くまでの道のりは決して順風…
-
菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
-
1000年企業の肖像
日本は創業100年以上の企業が多くあり、世界一の長寿企業大国として知られる。その中には創業1000年を超えると伝…
-
10 Questions
いま、世の中で起こっていること。誰もが知りたいと思っていること。でも、ちゃんと理解できていないこと。漠然と知って…
-
河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは…
-
ファクトフルネス思考
「データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介した書籍『ファクトフルネス』は、日本で90万部を超えるベストセラーとな…
-
大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
日本の読者にとって欧州のニュースは遠い国々の出来事に映るかもしれない。しかし、少子高齢化や低成長に悩み、企業の新…
-
グルメサイトという幻
食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ──。外食店探しに欠かせない存在となったグルメサイトの地位が揺らいでいる…
-
フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
-
ファストリ、異次元の経営
コロナ禍の混乱からいち早く抜け出したファーストリテイリング。破綻が相次ぐアパレル業界にあって、なぜユニクロだけが…
-
テスラが仕掛ける電池戦争
日本でも2030年代半ばに新車販売でガソリン車をゼロにする方針が打ち出されるなど、各国の環境規制強化により普及段…
-
70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
全8回