更年期で体はほてり、頭が痛い。家事をしようにも、起き上がれない。「なんで帰ってきても、寝てるの?」と言う夫。ご飯の準備ができていないことに申し訳なさもあれば、家事をきちんとできない自己嫌悪もある。こんなに辛いのに、一番身近な家族がどうして分かってくれないんだろうか。
そんな更年期世代の夫婦をターゲットにしたサービスがある。2020年にスタートした、LINE上で体調を共有する「wakarimi(ワカリミ)」だ。事業を立ち上げた高本玲代氏自身が、こうした更年期特有の症状や夫婦間でのけんかに悩んでいたことがサービス開始のきっかけだ。ワカリミではLINEを介し更年期の正しい情報を届け、専門家が更年期障害の相談に乗ることで、専門外来の受診にもつなげる。「更年期はヒステリー」と誤解されがちだが、パートナー同士の理解を深める。
高本氏は事業を立ち上げる前、帝人などで働き出産や育児を経験した。MBA(経営学修士)を取得しており、起業を目指していたがインターネットサービスの運営に詳しいわけではなかった。滋賀県に住むこともあって東京周辺のいわゆる「スタートアップかいわい」に属する投資家らと人間関係があるわけでもない。「ゲームのドラゴンクエストであれば仲間や知恵を授かり、大きな敵を倒していく。ただ、地方在住で子供がいる私は起業したくても、どこから始めればいいんだっけと思っていた」と話す。
起業のきっかけになったのが、uni’que(ユニック、東京・渋谷)の運営するインキュベーション「Your」だ。同社の若宮和男CEO(最高経営責任者)は、DeNAやNTTドコモなどで新規事業の創出を担当してきた。「投資家や経営層など意思決定をする人に男性が多く、せっかくの新規事業の芽をおじさんが『分からない』と言って、つぶしてしまうことが多々あった」という。Yourでは女性の起業家に特化し、若宮氏をはじめスタッフが財務やエンジニアリング、デザインのアドバイスをする。
「この事業支援の仕組みがなければ、いまも起業をしていないと思う」と高本氏は話す。若宮氏は「これまで言われてきた、IPOや急激な成長といった画一的な価値観ではなく、長く継続できるサービスをこつこつと続けていく。30年後に見て(事業の売り上げを)積分して同じになるのであれば、小さな事業を100個積み上げていくこともイノベーションではないか」と話す。
フェムテックは「Female」と「Technology」を掛け合わせた言葉で、生理周期アプリを開発するドイツのスタートアップ、Clueのアイダ・ティン氏が提唱した。生理関連のサービスが投資家からの理解を得にくく、資金が集まらないなか、金融とITを融合させた「フィンテック」と同様に、女性の体の悩みを解決する分野を表現できないか、と考えたという。

従来は見えなかった女性の悩みを製品、グッズ、テクノロジーとして「フェムテック」という言葉で表現することで、これまで見えていなかった市場、産業として徐々に認識されるようになった。
ただし、課題もある。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1185文字 / 全文2468文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「芽吹くフェムテック市場」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?