
生理前のイライラした気持ちに、じんとする下腹部の痛み。そして、妊活、更年期障害のときに感じる目まいや体のほてり……。年齢を重ねるごとに、避けられない女性の悩み。こうした女性が抱く体や健康への不安をテクノロジーでサポートする「フェムテック」の分野が盛り上がっている。
フェムテック(Femtech)は「female」と「technology」を掛け合わせた造語だ。「スマートフォンなどのデジタルデバイスのあるライフスタイル、個人の多様性、女性が継続的に働くことも当たり前になるなか、フェムテックは現代の価値観に合わせて再設計した製品群を指す」と、米国のフェムテック事情に詳しいデロイトトーマツベンチャーサポートのセントジョン美樹氏は定義づける。
これまでにも生理用ナプキンやサプリメントなど、女性の体の悩みに沿った製品やサービスはあった。フェムテックの役割は、新しい技術により、もっと軽やかに、生理や更年期をタブー視せずに寄り添うこととも言えそうだ。例えば、スマホのアプリを使って気軽に妊活やPMS(月経前症候群)の相談ができるサービス、ナプキンを使わない吸収型のサニタリーショーツなど。
自分は男だからフェムテック市場は関係ない。果たしてそうだろうか。経済産業省によれば、女性の生理に伴う体調不良による労働損失や医薬品・通院にかかる費用など経済的な負担は国内で約7000億円にのぼるという。更年期による体調不良により昇進をためらう女性も少なくない。言い換えれば、それだけ女性の体に力を添えられる市場、手立てが眠っていることにもなる。
働くあなたの周りには、これから上司にも部下にも女性は増えるだろう。日本でも「女性特有の健康課題を知ることが、必要なマネジメントスキル」と考え、研修メニューの改革に乗り出す企業も出てきた。働く女性が増えるなか、優秀な人材に継続して働いてもらおうと、不妊治療や育児中のメンタルサポートなどを充実させることが海外企業では採用戦略上、欠かせなくなっている。
男性も、もちろん女性も、他人事ととらえずにこれらの健康課題を理解することが多様な働き方を尊重するきっかけにもなる。成長途上にあるフェムテックの市場だからこそ、新たなビジネスの一歩になる可能性もある。知らないでは済まされない、というよりも、知らないのはもったいない。フェムテック市場に広がる可能性を追いかける。
連載予定
・「生理にサヨナラして分かった男女の違い」フェムテック議連会長の野田聖子氏に聞く(1月18日公開予定)
・排卵日に子宮内の善玉菌、データを使って「私」が知る
・「前例なし」日本の制度に風穴を アフリカ育ちの起業家が挑む
・眠れる市場のフェムテック 、人材採用・ビジネスの未来を握る
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この記事はシリーズ「芽吹くフェムテック市場」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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