米調査会社CB Insightsによると2020年の世界におけるフィンテック企業の調達額は約421億ドル(約4兆4000億円)だった。投資額は2年連続で減少しているものの、今も高水準で推移している。

 現在のフィンテックの潮流の原点を探すと08年にたどりつく。この年に発生したリーマン・ショックは世界経済を混乱の渦に巻き込んだ。金融機関の暴走が引き起こした惨事にもかかわらず公的資金の注入で金融機関が救済されたことに人々は怒りを覚えた。米ニューヨークのウォール街では「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」と叫ぶ大規模なデモが繰り広げられた。

 人々の怒りが頂点に達したのと同じ時期に、米国西海岸では新たな金融サービスの萌芽(ほうが)が見られた。金融とテクノロジーが融合することで、金融市場に皆が等しくアクセスできるようにする「Financial Inclusion(金融包摂)」が叫ばれ、数多くのスタートアップが生まれた。これが今に続くフィンテックの原点とされている。

 「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」。金融機関を揶揄(やゆ)するときにしばしば使われる言葉だが、こうした言葉が生まれる背景には金融機関に対する根深い憤りがある。金融機関は景気が良好なときは融資を拡大し、景気悪化とともに回収を迫る。個人も企業も、景気悪化時こそ金融機関の助けを借りたいはずだが、金融機関は安定した経営を考えて逆のロジックで動く。だから金融機関はあまり顧客から愛されることがない。

 ある種当然で、仕方がないこととされてきた金融機関と顧客の関係を塗り替えた金融サービス提供事業者がある。13年創業の米Chime(チャイム)だ。チャイムは銀行免許を持たず、The Bancorp Bank(バンコープ銀行)と提携して金融サービスを提供している。

 こうしたプレーヤーを「ネオバンク」と呼ぶが、チャイムはこのネオバンク市場で最大手の地位を築き上げた。その最たる理由は、これまで金融機関が常識だと思っていた収益源を自ら捨て、顧客視点に立った金融サービスを手がけている点にある。

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