いま新電力がやるべきこと

 今新電力がやるべきことは、顧客対応に全力を尽くすことだ。コールセンター部門と料金請求部門で協力して、現在の需要家の1月末までの想定使用電力量を算出し、想定請求金額を算定する。その数字を需要家に正しく伝えた上で、新電力としての方針を説明することになるだろう。

 ここでいう方針には、大きく4つの考え方がある。まず第1が、高騰月は「市場連動価格にしない」と発表するという方法だ。ただし、この選択肢がとれるのは、1月途中から他社から電力を相対契約で融通してもらえる見込みがつき、JEPXからの調達量を減らすことができる新電力に限られるだろう。

 第2が、自社の別の電気料金プランに切り替えるよう顧客を誘導する方法だ。もちろん、市場連動プラン以外の電気料金プランがあることが前提だ。

 そして第3が、新電力が損失を補填し、需要家への請求金額を減免する方法だ。新電力の経営に極めて深刻な影を落とすことになるが、需要家への責任感を完遂し信頼を確保するために採用する新電力も存在する。

 第4の方法が、特に何も提案をしないというものだ。契約時から需要家に対して十分に説明責任を果たし、需要家が自らリスクを引き受けて市場連動プランを選んだことが客観的に明白な場合に選択可能な方法だ。需要家に高騰リスクについて説明をしたこと、高騰があっても請求金額に異を唱えないことなどを定めた同意書を事前に需要家から回収していることなどが条件となるだろう。

表2●市場連動プランを提供している新電力には今、4つの選択肢がある(出所:著者作成)
表2●市場連動プランを提供している新電力には今、4つの選択肢がある(出所:著者作成)
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 市場連動プランを提供している新電力の対応は様々だ。嵐が過ぎ去るのを待つがごとく、その後の対応を明らかにしていない新電力がいる一方で、需要家に率先して情報を提供し、自社の別プランへの切り替えを誘導したり、自社プランの解約方法を解説したりしている。なかには、需要家の請求金額を減免するという損失補償に踏み切った新電力も存在する。  

 自然電力は1月7日に公表した「日本卸電力取引所(JEPX)電力取引価格高騰に関する重要なお知らせ」で、需要家に市場の高騰状況を詳細に伝えた。1月11日には、1月、2月の請求分については需要家の管轄エリアにおける大手電力会社の電気料金を基準として、それを超える分の電気料金につき3万円を上限として値引きすると発表した。同社のWebサイトには、同社との解約方法まで分かりやすく掲載されており、需要家への対応を迅速かつ真摯に実施している様子が伺われる。

 また、自然電力の取次であるボーダレス・ジャパン(東京都新宿区)が展開する「ハチドリ電力」は、1月8日に需要家の管轄エリアの大手電力会社の電気料金を基準とし、それを超える電気料金を全てハチドリ電力が負担することを明らかにした。需要家にしてみれば、大手電力と契約した場合と変わらない電気料金となる。

 両社ともに市場高騰による調達コストの上昇分を需要家に転嫁しないため、大きな利益喪失が見込まれる。だが、需要家の信頼確保を優先させるべくリスクを取りにいったのだろう。

 市場連動プランを提供している新電力の中には、事前の情報提供体制の構築や、市場高騰の影響を抑える仕組みを取り入れている新電力もある。

 ダイレクトパワーは、かねて需要家への情報提供に力を入れてきた。需要家向けの「マイページ」では30分ごとに、全てのエリアにおける請求金額を明示している。JEPX価格の情報提供に留まらず、請求金額まで示しているケースは珍しい。また、需要家がJEPXの高騰に気が付くように、需要家があらかじめ設定した一定の閾値を超えるとメールが需要家に配信される仕組みを採用している。

 みんな電力は電気料金が急激に高騰しないような工夫を施している。電源コストを6カ月平均で調整する「電源コスト調整単価(みんなワリ)」の採用だ。また、市場高騰の影響を受ける2月の電気料金について、料金シミュレーションによって使用量に応じた電気料金の実請求金額を確認できるようにしている。

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