想像を絶する電気料金の請求になる

 市場連動プランを利用する需要家は、このJEPX価格をそのまま従量料金単価に反映した場合、想像を絶する電気料金の請求を免れない。

 例えば、2世帯住宅など使用電力量が大きく、月に2万円程度の電気料金であった需要家の1月分の電気代は10万円を超えるおそれがある。市場連動プランにしたことで、かえって電気料金が上昇してしまう。

 もちろん「電力自由化は需要家が電力会社や電気料金プランを自由に選ぶことができるが、それは自己責任である」という建前は首肯すべきである。

 市場連動プランの選択によって電気料金の高騰という悲劇に見舞われる需要家は、市場連動というリスクを自ら背負ったことになる。このため、新電力には責任はなく、需要家は自己の選択を呪いながら粛々と電気料金を支払うべきであるという論調には一定の説得力はある。

 一方で、JEPXという、およそ一般国民には馴染みのない市場における高騰リスクを新電力が需要家に十分に伝えてきたかという説明責任の問題は引き続き残る。

新電力は需要家に市場高騰リスクを十分に伝えていたか

 市場連動プランを導入している新電力のWebサイトを確認しても、過去の市場価格の高騰事例などを参考にしながら明確にJEPXが高騰する恐れがあることを需要家に伝えている新電力は、自然電力(福岡市)など数える程しか存在しないのが実情だ。

 市場連動プランを紹介する新電力の多くは、「市場価格が上昇すると割高な電気料金になる可能性がある」という表記にとどまり、むしろ価格が安くなるようなメッセージを伝えている。

 実際、料金比較サイトなどを通じて、料金の安さを理由に契約した需要家は少なくない。また、法人向けの見積もり提案の際に、料金計算例といった形で安価な料金を見せていたケースもある。

 電気料金の爆騰を十分な情報を提供せずして、市場連動メニューを選択した需要家の責任であると断ずるのは、いささか早計ではないだろうか。

 また、市場連動プランを採用する新電力は、JEPXの情報を需要家に提供しているが、元より馴染みの薄いJEPXの情報の読み方のチュートリアルや、将来の市場価格の動向を需要家に示すケースは極めて少ない。つまり「市場連動」というが需要家のほとんどは、JEPXという市場を正しく理解しないままに契約を交わしていることがあるのだ。

 また、市場連動プランを採用する新電力の中には、JEPXにおける取引経験が浅い企業も少なくない。つまり、本当の市場高騰リスクを体験したことなく、目先の市場価格が安価であるから市場連動プランを導入したという”JEPX素人“では、需要家の問い合わせや苦情に適切に対応することができるか甚だ疑問である。

 新電力のコールセンターには、「いつ、この高騰は収まるのか」「なぜ、この高騰を教えてくれなかったのか」と言った悲鳴に近い問い合わせが殺到していることは想像に難くない。

 ここで、2017〜2018年の冬に発生したJEPXの高騰を体験した新電力であれば、経験に基づいて需要家の不安や怒りを和らげる対応を期待できる。

 一方、高騰自体を経験したことのない新電力では、コールセンターもパニックになってしまい、結果、需要家の不信と離脱をせき止めるどころか助長しかねない。最悪の場合、十分な説明をされなかったと考える需要家たちが集団で新電力に対して訴訟を起こす可能性すらある。どうあれ、顧客の大量離脱も考えられる危険な状況だ。

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