2020年は激安料金だった市場連動プラン
JEPXは30分単位で取引しているので、電気料金の従量単価も30分ごとに変動する仕組みだ。市場価格が安価な朝や夜に電力を多く使い、夕方など市場価格が高い時間帯に節電すると、電気料金を節約できるメリットがある。
こうした特徴を持った市場連動プランは、株価の変動と同じで、一喜一憂するのではなく1年間でのトータル金額などを勘案して評価した方が良い。例えば2020年度は、JEPX価格は史上最安値と言って過言でないほどの安さだったため、安価な電気料金の恩恵を存分に受けることができた。だが、2020年12月後半から現在に至る市場高騰で、今月の電気料金は前月の5倍以上に跳ね上がる可能性もある。
新電力にとっても市場連動プランは両刃の剣だ。新電力は今、何をすべきなのか考えてみたい。まずは、市場連動プランの現状から分析してみよう。
図1は、2020年11月のJEPXスポット市場の東京エリア平日の24時間平均価格を示したものだ。月間の平均5.51円/kWh。取引価格が比較的上昇しやすい昼間時間(8:00〜22:00)の平均価格も、5.62円/kWhだった。
1年前の2019年11月の同エリア平日の24時間平均価格は9.03円/kWh、昼間時間の平均価格も9.50円/kWhであった。つまり、2020年11月の市場価格は2019年の半額という安さだったのだ。
JEPXで取引される電力は、各地の発電所の余剰電力と、北海道から九州までの各エリアの大手電力やJパワー(電源開発)などの発電事業者が卸す電力で構成されている。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出を受けて、外出自粛やイベントの中止、企業活動の低迷によって電力需要は減少した。さらに、世界的な原油安、LNG(液化天然ガス)安などによって、発電用の燃料調達単価が引き下がったことが複合的に影響して、極めて安価な市場価格となった。
そのため、JEPXの価格下落を奇貨として市場連動プランを採用した新電力は、2020年に増加している。2020年4月頃に市場連動プランに切り替えた需要家は、12月を迎えるまではJEPX下落の果実を得たはずだ。
しかし、好事魔多しとはよく言ったもので、JEPXの価格は高騰した。
12月中旬から寒さが徐々に厳しさを増し始め、電力の需要が増え、LNG不足も相まってJEPX価格は上昇の一途を辿った。下のグラフは、JEPX東京エリアの取引価格である。2019年の平均価格と比較して、ほとんど全時間帯に渡って価格が上昇していることが分かる。
この価格上昇は年末、2021年の正月を迎えても収まらなかった。それどころか、JEPX価格は日々、史上最高値を更新し続けたのだ。東日本では1月13日に250円/kWh、同日の西日本でも201円/kWhをつけた。もちろん、両エリアにおけるJEPX史上最高値である。
JEPX価格を前年度と比較した表も掲載する。2020年12月は前年12月と比べて2倍程度の価格上昇であったが、2021年1月は前年度比1000%超えと、目を疑いたくなるような数字である。
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