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「もし12月上旬に状況が分かっていたら・・」

 「12月上旬に状況が分かっていたら、LNG調達をもっとうまくやれたのに」。ある大手電力幹部は、こうつぶやく。この言葉は電力市場における情報公開の重要性を示唆している。

 燃料不足により発電所の出力を低下させることを「燃料制約」という。問題は、燃料制約に関する情報が、ごくごく一部しか公開されないことだ(「電力市場の異常な高騰はまだまだ続く? LNG供給に乱れ」

 燃料制約に関する情報公開については、2018年に起きた燃料制約によるJEPX価格の高騰後に電力・ガス取引等監視委員会で議論されてきた(「本当に「燃料制約」は起きていたのか」「発電所の稼働状況を情報公開せよ」)。だが、依然として燃料制約情報の開示は必須にはなっていない。今回の件を教訓に、市場が正しく機能するよう情報開示を進める必要があるだろう。

 ある海外エネルギー会社関係者は、「正直なところ今回のJEPXの高騰は、海外市場を見ている立場からすると驚きでしかない」と言う。

 さらに、「海外ではLNGタンクの在庫状況は情報公開するのが当たり前。日本では、灯油やガソリンの在庫情報は石油連盟が毎週公開しているものの、LNGの情報は公開されていない。日本の電力市場の情報公開は非常に消極的なものだ」と指摘する。

北東アジアでLNG枯渇、電力不足の解消は少なくとも1月末

 JERAを含めて大手電力各社はLNG調達に奔走している。「12月末頃からJERAや関西電力が血眼でLNGを買いに走っていた」(関係者)。

 「1月に入ってからは、1月中にデリバリーしてもらえるなら価格がいくらでも買うと、複数の大手電力が言っている」(関係者)という。LNGのスポット調達は、購入からデリバリーまでに短くても30日程度はかかる。12月末に追加しても、それが日本に到着するのは1月末から2月の計算だ。

 LNG取引に詳しい関係者は、「3月到着分なら今でも買えるし、2月末なら調達可能だ。だが、今から1月末にはデリバリーできない。12月頭に手当してないといけなかった」と説明する。

 強烈な寒波に襲われたのは日本だけではない。中国でも電力不足は顕在化している。北東アジアでのLNG争奪戦は熾烈を極めており、北東アジアでLNGが枯渇している状況だ。

 既にLNGスポット価格は高騰しており、100万BTU当たり20~30ドルになっていると聞く。一部報道によれば、同35ドルで調達した事業者もいるようだ。あるエネルギー会社幹部は「LNG価格は過去最高を更新するだろう」と予測する。

 しかも、いくらLNGを買い続けても、LNGタンクの運用条件の関係で、ひとたび不足した状況に陥ると解消するには時間がかかる。

 「発電用のLNGはタンクが3日ほどで空になる。特に東京湾のタンクは需要に対してタイトな状況なので、配船をうまく調整していかにタンクの回転数を上げるかの勝負。常に自転車操業しているので、いったん不足してしまうと余裕を持った運用に戻すのは容易ではない」(JERA関係者)。

 LNG不足の解消には、寒さが和らいで電力需要が減少し、LNGの消費量が減る。もしくは、電力需要以上にLNG調達量が増えるかのどちらかしかない。

 このため、複数の電力関係者が「LNG不足は少なくとも1月末まで続く可能性が高い」と厳しい予測をしている。もしくは、寒さが和らぎ、真冬が過ぎ去る時までかかるだろう。

 ある新電力関係者は、「早く到来した冬は早く終わると言われている。早く気温が上がることを願っている」と言う。

 電力需要のひっ迫による停電リスクの高まりと、JEPXの価格の高騰による小売事業者の経営圧迫が、1日も早く解消することを願うばかりだ。