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 電力自由化を経て、東電EPの東京エリアでのシェアは大幅に低下した。東電EPの需要予測だけでは、東京エリアの状況を把握するのが難しくなっている。これまでの大手電力の小売部門の情報を基に発電事業者が燃料調達量や発電量を決める方法に、限界がきたということなのだろう。

 JERA関係者は、こう指摘する。「東電EPが市場に流した電力がすべて売れているという状況を一般送配電事業者である東京電力パワーグリッド(PG)や広域機関が把握し、その情報が我々発電事業者に共有されるべきだった。東電EPの需給計画に変更がなかったため、一時的なものだと解釈していたが、それが結果としてJERAのLNG在庫を減らすことになってしまった。今後はJERAが一般送配電事業者や広域機関と接点を持ってやっていく必要がある」。

 各エリアの安定供給を司るのは、東京電力パワーグリッド(PG)をはじめとする各エリアの一般送配電事業者であり、日本の電力システム全体を見ているのは広域機関だ。送配電事業者と広域機関には、発電事業者と小売事業者の情報が集約されている。

 かつて大手電力の小売部門がエリア需要の大半を押さえていた時代は、発電部門(発電事業者)は小売部門の情報だけで全体を把握することができた。だが、今はそうではない。しかも小売部門も、JEPXを含めて様々な調達手段を検討するようになっている。従前と変わらず、発電事業者が電力供給先の小売事業者としかコミュニケーションがない体制では、適正な需要量を把握できず、過不足ない燃料調達を進めるのが難しくなっている。

JEPXは価格シグナルを出せなかった

 また、この構造はJEPXの価格シグナル機能にも影響を及ぼしている。価格シグナルがJEPXに現れていれば、新電力は電力不足が露呈する前に何らかのヘッジ手段を講じることができただろう。

 しかし、LNG価格は高くなり電力需給もタイトになっていたにも関わらず、東電EPからかなり多くの余剰が限界費用でJEPXに供出されていたことで、JEPX価格はあまり高くならなかった。JEPXを利用する新電力などが、価格の推移から需給のひっ迫具合を察知することも難しかった。

 実際、12月の電力業界では、「12月半ばは気温が低下してJEPX価格が少し上がったが、正月休みは通常通りの需要で市場価格も下がるだろう」という見方が新電力を含めて、大勢を占めていたように思う。

 本来、JEPXは発電事業者と小売事業者の間に存在し、需給を価格シグナルとして発現するのが役割だ。今回の電力不足によって、JEPXが本来の機能を果たせていなかったことも露呈したわけだ。

 自主的取組という制度措置が必要なのは、発電事業は大手電力が約8割のシェアを占めていることに加え、JERAを除く大手電力各社は発電部門と小売部門が一体化しているからだ。電力自由化によって卸電力市場による価格シグナルや需給調整機能を活用するためには、発電部門と小売部門を分割し(発販分離)、発電事業者と小売事業者の間を卸電力市場がつなぐ形にしていくべきだろう。

再エネの増加もLNG調達の判断を難しくしている

 では、JERA以外の大手電力会社は、なぜLNG不足に起因する電力不足にあえいでいるのだろうか。複数の関係者が、「西日本の大手電力はLNG調達量を少なめにしていた」と明かす。

 LNG価格が高騰する中で、他の大手電力は、バイイングパワーでJERAや中国勢に劣後し、思うようにLNGを調達できなかった可能性がある。また、再エネの増加によって火力発電による発電量の変動が大きくなり、最適なLNG調達量を見定められなかった事業者もいただろう。

 例えば九州電力の場合、2020年3月期中間決算において余剰LNGの転売に伴う損失を約130億円計上している。九電は太陽光による発電量が増加し、電力需要が高まる夏であっても昼間はかなりの部分の発電を太陽光で賄う状況となっている。

 LNGは契約によって引取量が定められていることから、ベース電源である石炭火力は稼働を落とし、その分もLNG火力を稼働させてLNGを消費してきた。それでもLNGが余りに余って、その対処に苦慮する状況だった。

 「再エネ導入量が非常に多い九州エリアにおいては、冬とはいえLNGを大量に調達する判断は難しかっただろう。LNGの調達量が少なかったと責めるのは酷だ」(関係者)。再エネ導入量の急増という変化もまた、LNGの調達判断を難しくしている。

 こうした各社の事情によりLNGは不足し、12月からLNG火力発電所の出力を徐々に低下させていたとみられる。JERAは他社が出力を絞った分もカバーする形でLNG火力を稼働させ、徐々にLNG調達量と電力需要のバランスを崩していったのだろう。

 JERAはLNGの需給がタイトになってからも、11月、12月で100万トン近くのLNGを調達している模様だ。1月到着分もこれに匹敵する量を調達している。規模が大きく、海外での燃料トレーディング事業を手がけてきたJERAだからこそ、これだけの量をスポットで追加調達できたと言えるだろう。

 だが、「全電力会社からJERAに緊急要請が来ている状況。他社がLNGを思うように調達できていないため、どれだけ追加調達して発電しても全て吸い込まれてしまう。新設の常陸那珂火力発電所を徹夜で準備して1月8日に前倒しで営業運転を開始した。だが、それも他社の不足のカバーで一瞬でなくなった」(関係者)。