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新型コロナの影響に揺れた2020年のLNG市場

 LNGを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてきた。世界的な経済活動の低迷で原油価格が暴落。北東アジアにおけるLNGスポット価格指標の「JKM(Japan Korea Marker)」も低迷した。2020年4月末には、史上最安値の100万BTU(英国熱量単位)当たり1.825ドルを記録した。

 LNGマーケットに詳しい関係者は、コロナの影響をこう説明する。「例年であれば韓国、中国勢が4~5月から冬の手当てを始める。だが、2020年はコロナの影響でLNGを買わなかった。このため産ガス国は需要の動向に合わせてLNGの生産量を落としていた」。

 夏が終わった頃には、LNG輸入国の中国や台湾で経済が復調し始め、エネルギーへの需要が戻ってきた。「10月終わり頃には中国の爆買いが始まり、1~2月到着分のLNGの値段はどんどん上がっていった」(関係者)。

 11月中旬に100万BTU当たり6ドル台前半だったLNGのスポット価格は、12月15日には同12.4ドル、さらに、今では同20~30ドルでの取引となっている。価格が下落していた2020年春と比較すると10倍、11月に比べても5倍近い水準だ。

 ただ、LNG価格が高騰して調達の難易度が高まっても、LNGが全く手に入らないわけではない。ある関係者は、「12月中旬までJERAが確保していたLNGは適正量だった。これは今でもそう考えている。LNG不足が顕在化したのは12月の休暇時期に入った頃だった」と明かす。

 他方、「JERAが12月上旬にLNGを転売していた」という話を聞く機会も少なくない。JERAはトレーディング子会社JERA Global Marketsなどを活用して、LNGをトレードすることで利益を最大化している。「12月上旬は通常通りLNGのトレードを実施していた。国内向けの調達量を減らすための転売ではない」(JERA関係者)という。

電力自由化で見えなくなった「エリア需要」

 そのJERAが異変に気づいたきっかけは、東京電力エナジーパートナー(EP)の電力需要予測が12月下旬に急激に大きくなったことだったという。

 JERAが発電した電力の大半は、東京電力グループと中部電力の小売部門である東電EPと中部電力ミライズに供給している。このためJERAは小売2社の需要予測に基づいて、LNG調達量を決めて発電する。

 この際、東電EPの電力調達量が自社の需要よりも多く、余剰が出た場合には、東電EPがJEPXに限界費用で供出(玉出し)している。これは電力市場の活性化のために国が定めた「自主的取組」というルールに基づくものだ(中部電への余剰分は、中部電ミライズではなくJERAが市場に供出している)。

 「通常であれば、東電EPがJEPXに売り札を出しても約定せずに残るものがある。ところが12月半ば頃から玉出しした分はすべて約定していた。既に他の発電事業者がLNG不足から発電所の出力を落とし発電量を絞り始めていたためだ。こうした情報が得られていないまま、東電EPの需要を大きく超えた、とてつもない量の電力が限界費用で市場に流れていた」(関係者)。

 既に電力需給はタイトになってきていたが、東電EPや中部電ミライズからの情報をよりどころにしていたJERAには電力需給の変化が伝わっていなかった。

 「12月下旬になって東電EPが予測した需要量が急に大きくなったので、LNGの調達状況と照らし合わせたところ、厳しい状況だと分かった。東電EPの需要が、東京エリア全体の需要と乖離していたことを、この時、はっきり認識した」(JERA関係者)という。