日本企業には「日立ショック」が必要だ(写真:日刊自動車新聞/共同通信イメージズ)

 最近、日立製作所のことをよく耳にする。そこで今回筆者は、日立の事例が「日立ショック」とでもいえるほど、日本にとって大変重要であることを主張したい。具体的には、次の3つの理由からである。

(1) 「選択と集中」v2.0の神髄。日立は、電気機械メーカーからインフラ・データソリューション会社へのアイデンティティーシフト(大転換)を含む「KAISHA再興」の好例である。

(2) 「言い訳」の終焉(しゅうえん)。 日立の事例は、日本国内の規制や無言の圧力、あるいは限られた条件の中に置かれていても、完全な企業変革が可能であることを示している。このことから、他の大企業が「変われない理由」として上げている様々な内容が、単なる言い訳でしかないことがはっきりと分かる。実際他の大企業も、デジタルトランスフォーメーション(DX)で競争していくために、独自のリフォーカスによって、戦略的な再ポジショニングをし始めている。

(3)  企業資産を取引する国内市場の誕生。 日立の売却やカーブアウト(事業分割)は、国内のPE(プライベート・エクイティー)市場の急成長に貢献した。そのおかげで、企業資産や事業の売買が容易になり、あらゆる企業にとって、「KAISHA再興」を検討できる環境が整ってきた。

日立の変革の歩みを振り返る

 日立は1990 年代に経営の「選択と集中」を始めたものの、2009 年時点でまだ上場子会社 が22社あった。09年3月期に7875億円の赤字を計上したのをきっかけに、グローバル競争力を強化するため、上場子会社の再編などによる構造改革に着手した。

 20年4月には、中核子会社3社の1つとして知られた日立化成を昭和電工に売却した。また、20年には日立が日立ハイテクノロジーズ(現日立ハイテク)に100%出資し、最近では日立建機と日立金属も売却すると報じられた。これらは日立の最後の上場子会社である。

 一方で日立は、ただ売却するだけで終わっているわけではない。積極的に、様々な新しいセグメントの事業を買収している。表は、過去8年間の日立の主な事業改革活動を示す。

 活動の目的は、日立の企業アイデンティティー(日立とは何かを体現する要素)を変革することにあった。日立のビジョンは、「DXプレーヤー」になること、つまりビッグデータ対応や交通・インフラシステムの問題解決、そしてIT(情報技術)データシステム、メカトロニクスのアプリケーション、IT制御及び管理のスペシャリスト集団になることだ。

 そのため、建設機械や医療機器、さらには化学・素材までもが、日立にとってもはやコア事業ではなくなってきた。たとえそれらが非常に事業規模が大きく、収益性が高いものであっても、もはや将来の日立像に合致しなくなったわけである。その代わりとして、日立は買収によって将来の日立像に合致する新しいコア事業を補ってきている状態だ。

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