サラリーマンが意思決定者だと、どうしても長い目で見られない

成毛:国のお話が出ましたが、「医療をつくる」側の問題についてひとつお尋ねします。投資家の視点からすると、研究開発の加速に伴い、医学分野はリターンも非常に早くなっています。その分、お金も集まる分野になっているわけですが、日本は米国や中国に比べると非常に規模が小さい。結果として、2040年には日本の医学分野での研究の劣位がはっきりする気もするんですが。

:その通りです。日本の研究費はアメリカと数値を並べて書くのが恥ずかしい水準です。公的な研究費だけでも、100倍違います。例えば、ある有望な研究に米国が1億円出していたら、日本の場合、100万円のイメージです。

成毛:100万円もらっても、地方の大学でしたら、首都圏との交通費20回分で終わってしまいますね。

:そうなんです。これは日本の平等主義の弊害です。日本の国力はこれから大きく伸びることは期待できないわけですから、国力なりの人数に配分すべきだと思います。ところが、予算を薄く広く配ろうとするから、ひとり当たり100万円になってしまう。100分の1に絞って、ひとりに1億円あげた方がいいと思いますよ。最近はそうした方向に少しずつシフトしていますが、冒頭で触れた医師国家試験と同じく、やはり改革が遅いと感じます。

成毛:短期的な成果も求めすぎですよね。

:はい。10年支援しますが、2年後に成果を出さないと、残りは打ち切りますよって平気で言ってますからね。

成毛:それ、10年あげたことになってないですよね。

:なっていないですね。「2年後どころか、10年後成果が出なくてもかまいません」とでも言わない限り、目先のプレッシャーに潰されて、研究は進みませんよ。ですから、私は民間マネーに期待しているのですが、いかがですか。

成毛:ダメですね。そもそも、構造が絶望的です。ファンドを組成すると、そこに投資するメジャーな投資家は、金融機関や大企業になりますが、これが問題です。なぜならば、結局、金融機関や大企業の中にいるのはサラリーマンで、彼らが意思決定するからです。サラリーマンが意思決定者だと、どうしても自分たちが関わっている期間内にそれなりの結論を出すようになってしまう。結果的に「何がなんでも、5年以内に最終的な結論を出せ」となりがちです。長くても10年ですね。

 アメリカの場合は20年、30年のファンドがたくさんあるんですが、日本にはない。日本で重要なのはファンドの未来ではなく、彼らの役職寿命なんです。そんなものにお金は集まりませんし、まともに機能するわけがありません。2040年までにサラリーマン根性が一掃されない限り、状況は大きく変わらないでしょうし、一掃されるとも到底思えません。私が『2040年の未来予測』を書いたのもそうした絶望からで、国や大企業に期待せずに、一人ひとりが一歩踏み出したり、リスクに備えたりするしかありません。考えて動き出せば、少なくとも、その人の未来は変わります。

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 iPhoneが発売されたのは、たった13年前でした。現在、スマートフォンがない世界は考えられません。テクノロジーの進歩に気づかないだけでなく、ほかのことも、気づいたときには手遅れなのが人間のさがです。

 地震や災害も、リスクを分かっていながらも被災するまで手を打つ人は少ないし、明らかに社会制度は破綻しつつあります。人口は増えず、老人ばかりの国になるし、環境問題も悪くなる一方です。これまでと同じように暮らしていたら、今の年齢によっては取り返しのつかない可能性もあります。

 この本では、さまざまなデータから導き出されるありのままの未来を著者が予想します。

 暗い未来でも未来を予測できる力さえあれば、どう生きればいいかは自然と分かります。「今日」にはこれから起こることの萌芽(ほうが)があり、現在を見つめれば、未来の形をつかむことは誰にでもできます。

 本書は、ただ知識を得るためだけの本ではありません。読んだ後には、俯瞰(ふかん)的に未来を考え、そして自分の人生を切り開く力がついているはずです。

この記事はシリーズ「2040年の未来を一緒に考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。