デジタル庁創設で出遅れたデジタル化を急ぐ日本政府、DX(デジタルトランスフォーメーション)を果敢に叫び、コロナ禍を生き延びようとする日本企業。日本が抱えてきた課題を一気に顕在化せしめた新型コロナは、容赦ない変革を日本企業に突きつけている。

 グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップルといったいわゆるGAFAと呼ばれる企業群はコロナ禍を追い風に変え、成長を加速させている。完全にGAFAに覇権を握られ、生きる道を失ったかに見える日本企業。そして、「失われた30年」を過ごしてきたと言われる日本企業。だが、本当に日本は失うだけの時間を過ごしてきたのだろうか。

 「選択と集中」ができなかった日本には、技術や人の多様性が残った。そして、これこそが今から始まる二回戦で大きな武器と変わる。GAFAが寡占したかに見えるデータの領域は実は一部。二回戦はハードウエアに強い日本企業に大きなチャンスをもたらす。活用されていない貴重なデータの多くが現実世界に眠っているためだ。

 カギを握るのは「スケールフリーネットワーク」。この20世紀後半に発見された比較的新しいネットワーク理論が日本再浮上のヒントを与えてくる。

 東芝執行役上席常務・最高デジタル責任者で、東芝デジタルソリューションズ取締役社長を務める島田太郎氏、『アフターデジタル』や『DeepTech(ディープテック)』などのベストセラー書籍を通じて日本が進むべき道を照らし続けるフューチャリストの尾原和啓氏の両名がスケールフリーネットワークがもたらすインパクトを解説する。

※1月8日発売予定の『スケールフリーネットワーク ~ものづくり日本だからできるDX~』から一部を抜粋して掲載します。書籍の内容とは一部、異なりますことをご了承ください

 今、あらゆる企業が「DX」に直面しています。ネットワークで世界中がつながり、誰もがスマートフォンを持つ時代。インターネットを使えば地球の裏側にある商品だってその場で注文できてしまいます。各社がそんな時代に合わせた新しいビジネスモデルを構築していかなければ、いずれ取り残されてしまうでしょう。

 しかし、日本のDX事情は散々です。新型コロナの発生に際し、国民に一律10万円を給付する特別定額給付金のオンライン申請でトラブルが多発したことは皆さんの記憶にも新しいでしょう。日本では2001年にIT基本法が施行されてから行政のデジタル化を進めてきましたが、20年近くたった今も、他国では容易に実現できることができないというのが実情です。

 多額の税金を投入してきたにもかかわらず、DXを実現できなかったことに対し、2020年9月に発足した菅義偉内閣でデジタル改革担当に任命された平井卓也大臣は「デジタル敗戦」という言葉を用いて仕切り直しを始めています。行政、民間企業ともに圧倒的に周回遅れになっていると感じているのは、なにも私だけではないでしょう。

 私(島田)は2018年まで在籍した独シーメンスで、さまざまな企業のDXを見てきました。特に2014年からは独本社のデジタルファクトリー担当として、インダストリー4.0を推進する中心メンバーとともに働き、彼らがDXを推進する現場を間近で見てきました。

 帰国後は、その経験を日本の関係省庁や企業などでお話しすることが多く、日本企業が置かれている状況や将来の展望について多くの方々と意見交換する機会にも恵まれました。

 そんな中で、少しずつ私なりに日本が今後採るべき戦略についてのアイデアが芽生え、仮説となって膨らんでいきました。日本にはこれまで築き上げてきた独自の強みがあるのではないか。そして、デジタル技術と組み合わせることで、その強みを最大限に生かすことができるのではないか。

 2018年、思わぬご縁で、CDO(最高デジタル責任者)として東芝に入社することになりました。私のミッションは、もちろん東芝のDXです。東芝に入り、東芝という会社を知れば知るほど、私の中で膨らんでいた仮説は確信へと変わっていきました。

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