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 ファーストリテイリングが本部機能を東京湾岸に移転して進めている経営改革「有明プロジェクト」。必要な量を作り、無駄なく消費者に届けるというアパレルの究極の課題に挑む。目標はサプライチェーン改革にとどまらない。「正しい経営」に取り組むという柳井正氏は、有明プロジェクトを通じて何をしようとしているのか。

東京湾岸にある有明本部。ユニクロの本部機能の大半を東京・六本木から移転した(写真:的野 弘路)

 2020年12月26日。東京都下にあるユニクロの大型店は、年末の買い物客でごった返していた。売れ筋のフリースフルジップジャケットは新価格と書かれた「赤札」が掲げてある。ワゴンセールで投げ売りされているセーターのサイズはSとMに偏っていた。売れるサイズを読み切れず、需要を超えて作り過ぎている実情をうかがわせた。

 ファーストリテイリングは他社がまねできない品質の商品を、SPA(製造小売り)モデルでコストを下げて大量生産することで急成長してきた。しかし、欠品による機会損失を防ぐため、多めに作って余りをセールで売り抜くというアパレル業界の宿病から、ファストリも抜け出せていない。

 「無駄なものをつくらない、運ばない、売らない」「お客さんの要望が全部商品になり、その商品がお客さんの期待以上のものになり、すぐ届くようにする」。柳井正会長兼社長はアパレルの慣行を打破し、サプライチェーンから働き方まで変える経営刷新に乗り出している。

有明本部は東京湾に面している(写真:ロイター/アフロ)

 東京・豊洲市場から目と鼻の先にある湾岸の有明では、16年春に巨大倉庫を稼働させた。リアルタイムの販売状況に合わせて出荷するという「有明プロジェクト」を開始。17年2月にはユニクロの本部機能の大半を東京・六本木から、この6階建ての倉庫兼オフィスに移転した。