2016年に25年ぶりにセントラルリーグでの優勝を果たした広島東洋カープ。それから球団史上初めてのリーグ3連覇を果たした。当時、監督として率いていた緒方孝市氏は、どのようにチームをマネジメントしていたのか。そして、その理念や手法は、一般の企業や組織でも通用するのか。このコラムでは、緒方氏自身が経営者や組織のリーダーとの議論などの中で解き明かしていく。
広島東洋カープの監督を辞して約1年が過ぎました。33年間、つまり人生の半分以上の長きにわたり着続けたカープのユニホームを脱いでから初めての1年間、私はほとんど元プロ野球選手・元プロ野球監督らしい活動をしてきませんでした。その理由は後ほど記しますが、ただ、いろいろな方とお会いし、お話はしてきました。すると、毎回のように同じことを聞かれます。その質問とはこうです。
「なぜ、カープは3連覇できたのか?」
![緒方孝市[おがた・こういち] 1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。野球評論家。元プロ野球選手、同監督。1986年に広島東洋カープからドラフト3位指名を受け入団。2008年まで主に外野手として活躍し、3度の盗塁王に輝き、堅守の選手に贈られるゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後もチームに残り、コーチとして後進の指導に従事。15年に監督に就任すると16年から18年にかけてチームを球団史上初の3連覇に導いた。19年に退任。(写真:的野弘路、以下同じ)](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00224/121500001/pf.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=0430890860)
プロ野球が好きな方なら、3連覇というのが2016年から18年にかけてのことだったとすぐにお分わかりでしょう。私がカープの監督を務めたのは15年のシーズンから5年間。うち、ちょうど真ん中の3年間で、3連覇をしたということになります。16年の優勝はカープにとって実に25年ぶりであり、3連覇は球団史上初でした。ですから、その理由を知りたいという方が大勢いらっしゃるのでしょう。
カープが3連覇できた理由。それは、カープが3年間、勝ち続けられるチームだったからです。勝つだけのチームでは優勝はできません。勝ち続けられるチーム、これが、シーズンが終わったときにリーグを制覇する条件です。

野球観は経営理念
では、なぜカープは勝ち続けるチームになれたのか。どうしてそんなチームがつくれたのか。この理由はひとつではないと私は思っています。ただ、4位に終わった15年とその後とで、監督であった私が何を変えたのかは、はっきりとしています。
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