広島東洋カープ緒方孝市前監督とマツモトキヨシの松本貴志社長の対談。前回の「マツキヨ、『ドラッグストア日本一』を明け渡したら見えたもの」に続く今回のテーマは、商品戦略だ。最近ではコンビニエンスストアだけでなく、ドラッグストアやスーパーでも買い物をするようになった緒方氏。それらがお互いにライバルだと気がついたという。厳しい試合をどうやって勝ち抜くのか。松本社長は、プライベートブランド(PB)商品がそのカギを握るという。

緒方孝市・前広島東洋カープ監督(以下、緒方):ユニホームを脱いで家にいる時間が長くなり、買い物に出かける機会が増えました。ちょっとしたものならコンビニ、お使いを頼まれた場合にはスーパー、そこにシャンプーやトイレットペーパーが含まれていたらドラッグストアと、徐々に行く店の幅も広がったのですが、例えば飲み物などはどの店でも売っていますし、ドラッグストアも、私の住んでいる広島ではウォンツというチェーンが目に付きます。ライバルが多いですね。どうやって勝っていくのですか。

<span class="fontBold">緒方孝市[おがた・こういち]</span><br>1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。野球評論家。元プロ野球選手、同監督。1986年に広島東洋カープからドラフト3位指名を受け入団。2008年まで主に外野手として活躍し、3度の盗塁王に輝き、堅守の選手に贈られるゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後もチームに残り、コーチとして後進の指導に従事。15年に監督に就任すると16年から18年にかけてチームを球団史上初の3連覇に導いた。19年に退任。(写真:都築雅人、以下同じ)
緒方孝市[おがた・こういち]
1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。野球評論家。元プロ野球選手、同監督。1986年に広島東洋カープからドラフト3位指名を受け入団。2008年まで主に外野手として活躍し、3度の盗塁王に輝き、堅守の選手に贈られるゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後もチームに残り、コーチとして後進の指導に従事。15年に監督に就任すると16年から18年にかけてチームを球団史上初の3連覇に導いた。19年に退任。(写真:都築雅人、以下同じ)

松本貴志・マツモトキヨシ社長(以下、松本):緒方さんの場合も、お気に入りの店があると思うんです。

緒方:そうですね。甘いものを買うならあのコンビニ、おにぎりとかちょっとしたつまみのようなものを買うならこのコンビニという使い分けはしています。

松本:どうやって勝っていくのかというご質問でしたが、答えは、そうした「違い」をつくり続けていくことだと思っています。

 昔は薬局というと、店内には白衣を着た人がいて、体調が悪くなければ立ち入れないような雰囲気がありました。先人はそうした場を、立ち入りやすく間口を広げ、お買い得品がどこにあるのか分かりやすく陳列し、お客様に「マツキヨに行くと、家にまつわるものを楽しく選んで買えるのでお得」と思ってもらえるように取り組み続けてきました。それが、マツキヨらしさをつくったのだと思います。

<span class="fontBold">松本貴志[まつもと・たかし]</span><br>マツモトキヨシ社長。マツキヨココカラ&カンパニー専務取締役グループ営業企画統括。1975年生まれ。1999年4月佐藤製薬入社。2002年4月マツモトキヨシ入社。同社ドラッグストア事業本部長兼事業サポート室長着任。執行役員、取締役営業推進本部長兼営業推進部長兼通信販売部長、取締役副社長などを経て2021年4月より社長。
松本貴志[まつもと・たかし]
マツモトキヨシ社長。マツキヨココカラ&カンパニー専務取締役グループ営業企画統括。1975年生まれ。1999年4月佐藤製薬入社。2002年4月マツモトキヨシ入社。同社ドラッグストア事業本部長兼事業サポート室長着任。執行役員、取締役営業推進本部長兼営業推進部長兼通信販売部長、取締役副社長などを経て2021年4月より社長。

緒方:確かに、お金を払っているにもかかわらず、ドラッグストアで買い物をするとトクをしたような気がしてうれしくもなります。

松本:お客様がコンビニに求めるのが利便性であれば、ドラッグストアに求めるのは、楽しく選んで買うことです。ですから、コンビニはもちろんスーパーよりも、シャンプーや歯ブラシの品ぞろえは豊かにしています。

緒方:そう言われればそうですね。どれがいいか迷ってしまうほどあります。

松本:そこを楽しんでもらえるような仕掛けをつくり続けることが大事だと思っています。とはいえ、競争は厳しいです。僕らが仕入れられるものは同業他社も仕入れられます。同じ商品を同じような値段で売るだけでは、お客様はより近い店、より安い店に行くでしょう。

 今は、洗濯をしていて洗剤が切れたからといってみなさんがマツキヨに来てくれる時代ではありません。家の中にいながらネットでも買える時代です。だからこそ、わざわざマツキヨに行く理由をこちらがつくらなくてはなりません。そこで、私が仕入れ担当になった5年ほど前から、オリジナル商品、プライベートブランド(PB)商品に力を入れてきました。

緒方:PB商品というと、少し安いという印象があります。

松本:そうですよね。ナショナルブランド(NB)商品よりも価格を抑え、買いやすくしたのがかつてのPB商品でした。我々が扱うのはそういった時代のPB商品ではなく、第2世代、第3世代のPB商品です。日本の暮らしを楽しくするというコンセプトに基づいた、マツキヨでしか買えない商品です。

 例えば緒方さんは、エナジードリンクを飲みますか?

次ページ え、マザイ?