プロ野球広島東洋カープ前監督の緒方孝市氏による本連載。前回、「50歳からのセカンドキャリア 優勝監督が野球の外に探す道」でも宣言したように、経営者や各界のリーダーとの対話を通じて経営を学んでいく。開幕戦の相手は、4月1日に東京証券取引所の社長に就任する山道裕己(やまじ・ひろみ)氏。現在は大阪取引所の社長を務める山道氏は、実は広島市出身のカープファンでもある。ここでは、トラブルへの備えは十分にしておいたとしても実際に発生した場合はいかに早く復旧させるかが勝負と語る。

緒方孝市・前広島カープ監督(以下、緒方):選手として指導者として33年間、私は野球漬けの人生を送ってきましたが、ユニフォームを脱いだからには野球以外のことも学びたいと思っています。

 なかでも興味があるのが、経済の分野です。まだまだ何も分からない状態ではありますが、少し勉強してみると面白さを感じてきました。経済専門チャンネルでニュースを見たり、ユーチューブで経営者の講演を聴いたりしていますけど、奥が深いですよね。

 ただ、関心はあるものの、おいそれと手を出せないのが、株式なんです。2019年に監督を引退して給料がなくなったものですから、今、手元にあるお金を増やすにはと考えると、やはり株は候補の1つではあるわけです。先日は、何やら30年ぶりに株価が上がっているなんてニュースもありました。今はスマホでも株が買える時代ですから、皆さんの意識もだいぶ変わったのでしょうが、自分としてみるとまだ怖いところがあります。

 今回は、大阪取引所の社長で、4月から東京証券取引所の社長就任を予定している山道さんという、願ってもない先生に教えていただく機会を得て、ありがたく思っています。

山道裕己・大阪取引所社長(以下、山道):こちらこそ、お目にかかれてうれしいです。

 まず、そんなに難しく考えないでください。経済とは、人のしていることの集積です。今、東証には全部で3760社余りが上場しており、その時価総額は700兆円に達します。それを構成しているのは一社一社の仕事であり、その仕事をしている一人ひとりの人間です。こうした視点で、それぞれの企業が何をしているかを調べてみると、何かしらピンとくるものがあり応援したい企業が浮かんでくるはずです。

 車をつくっている会社もあれば、コンビニを展開している会社もある。身近な会社もあれば、聞いたことのない会社に出合うかもしれません。株を買うという形で応援すると、比較的身近に感じられますます面白くなると思います。

山道裕己(やまじ・ひろみ)
1955年広島市生まれ。77年に京都大学を卒業後、野村証券に入社。人事部長、欧州子会社社長などを経て野村証券専務に。2013年日本取引所グループに転じ、大阪証券取引所(現・大阪取引所)社長に就任。21年4月1日に東京証券取引所の社長に就任予定(写真:行友重治、以下同)

ファンになって応援する気持ちで株を買う

緒方:ふーむ。つまり、どの企業のファンになるかを決めることが投資家への第一歩ですか。

山道:そうです。その企業が株式を東証というマーケットに上場していれば、それを買って応援できます。

緒方:そう考えると分かりやすいようにも聞こえますが……。ただ、プロ野球なら12球団の中からファンになるチームを選べばいいですが、東証には3760社余りもあるわけですよね。しかも、情報があふれている時代です。どうやってそれぞれの会社のことを理解すればいいんでしょうか? 選んで学ぼうとしても迷ってしまいます。

山道:確かに選択肢は球団の数とは比べものにならないぐらいに多いですね。

 そうした方にはETFという選択肢があります。ETFとはExchange Traded Fund、上場投資信託の略称です。ニュースなどで耳にする日経平均株価とは、日本経済新聞社が選んだ225社の株価から導かれる数字のことですが、これに連動したETFを購入すれば、購入金額に応じて225社の株の持ち分が手に入ります。ですから、個別の企業に詳しくなくても、日本の大手企業225社全体を応援できます。海外投資家が日本株を買いたいけど個別の会社についていちいち調べるのが面倒くさいときに、日本株を買うという意味でこのETFを買ったりしています。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2690文字 / 全文4321文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「緒方孝市の負けから学ぶ経営論」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。