定年を控える50代での利用が多い

二瓶琢史氏(村田和聡撮影)
二瓶琢史氏(村田和聡撮影)

社長補佐の二瓶琢史氏(以下、二瓶氏):2020年末のデータによると、個人事業主制度を利用する割合が多いのは50代です。50代でも前半と後半では異なるかもしれませんが、定年が近づいていることを意識しているからかもしれません。50代になると人脈やスキルの蓄積が増えてくるので、個人事業主になっても何とかいけるんじゃないかといった思いも出てくるのでしょう。プライベートの面でも子育てが一段落して住宅ローンの返済も見えてきて、挑戦しやすい環境になるのかもしれません。

社内でどんなふうにこの制度について説明していますか。

谷田氏:私は、若手を中心に「こんな制度があるよ」と個人事業主制度について話しています。労働時間は原則として週に40時間までです。私が若いときは働きたいだけ働くことができたので、今の若者にはそういう意味では申し訳ない気持ちがあります。社会的な問題もあるから、それ以上は私から言えない。ただ、将来はAI(人工知能)に仕事を奪われる可能性もあります。そんな時代に備える意味でも、こうした制度を生かしてスキルを身に付けてほしいです。

タニタでは、定年後の働き方として個人事業主を選ぶ社員が出てきている
タニタでは、定年後の働き方として個人事業主を選ぶ社員が出てきている

経営側としては、個人事業主制度を導入するに当たってどのような思いがあったのでしょうか。

谷田氏:今から13年前の2008年、私がタニタの社長に就いたのは35歳のときです。35歳といえば、まだ経営者としては未熟ですよね。そんな私が会社の経営をしていく上で、考えたのがワーストシナリオです。会社を父である前社長から引き継いだけれど、経営を悪化させてしまったらどうしようか。そんなふうに考え続けていた中で生まれたのが個人事業主制度です。

ワーストシナリオですか。

谷田氏:私は組織論における(社員の2割が優秀、6割が標準、2割は成長意欲が低い)「2:6:2の法則」を信じています。仮に会社の経営が悪化したとしても、その2割の優秀な社員の多くは「再起を誓って頑張りましょう」と一緒に働いてくれるでしょう。ただ、それでも、辞めるという選択肢を選ばざるを得ないという状況とはどんな状況なのか。それは、これほど働いているのに給料が増えない、少ないという状況なのではないかと考えたんです。

 辞める理由がそこにあるとしたら、会社の経営が悪化している中で社員の求めに応じて給料を上げることはできないし、退職を止めることはできません。少なくとも、収入を維持しつつ会社のために働いてもらうようにするにはどうしたらいいのか。そこでハッと思いついたのが個人事業主制度だったのです。

なるほど。経営危機に陥ると優秀な人材の流出が問題となりますが、それを防ぐのが、この個人事業主制度なんですね。新制度導入による働き方への意識は、年代別でどのように変わったと感じていますか。

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