2017年に、個人事業主制度を導入した健康機器大手のタニタ。同社では定年の60歳以降に働ける再雇用の受け皿的な会社を設けているが、当初その会社に行く予定だった社員が一転、個人事業主になると手を挙げるケースが出ている。社員にどんな心境の変化が生まれているのか。タニタの谷田千里社長と個人事業主制度の設計・運用を担当する二瓶琢史社長補佐に話を聞いた。

2017年、タニタは個人事業主制度を導入しました。社員であれば何歳でも挑戦できる制度ですが、定年を控えた社員の応募はあるのでしょうか。
タニタの谷田千里社長(以下、谷田氏):驚いたのは、新制度の導入2年目に、60歳間近の優秀な技術系社員が手を挙げてきたことです。タニタでは定年後も働く場合は、本社社員の出張手配といった事務仕事などを引き受ける、子会社のタニタ総合研究所に行くことになります。その社員は、55歳のときに定年後も働くかどうかの意思確認をしてタニタ総研に行くことが決まっていました。ところが55歳の時点では会社として個人事業主制度はまだ導入していなかった。その後、制度の導入が始まり、社員から「個人事業主になりたい」との申し出がありました。
もしこの新制度ができていなければ、60歳でタニタ総研に行って、一線から退いた働き方をする予定だった。それが、個人事業主制度の新設によって60歳後もバリバリ働く道を選ぶ社員が出てきたということですね。
谷田氏:はい。現在は、個人事業主制度を利用する29人のうち2人が60歳以上です。もちろん、この制度は定年を迎える社員のためだけに作ったものではありませんので、何歳であっても挑戦してほしい。ですので、60歳間際の社員が制度を利用したことは、私たちとしては結果的にこの年齢の社員だった、という受け止めをしています。
いつまでも働き続けられる個人事業主は、定年後もバリバリ働きたいと考える社員にとっても魅力に映った、ということですね。この個人事業主制度を利用しているのは、どのあたりの年代が多いでしょうか。
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