緒形氏:当社に登録くださっている高齢者の方は約1000人ですが、実際に働いているのは約400人。就業率は約35~38%です。先ほども申し上げましたが、働きたい人と仕事のマッチングは簡単ではありません。ですが、かつては大企業で高い職位に就いていた方も一定数働いています。雇う側の意識改革同様、働く側も仕事を見つけるためには考え方を変えていかなければなりません。要は一人一人の気持ち次第なのではないでしょうか。
プライドの高い人は続かない
当社は首都圏中心に行政が主催する「お仕事説明会」に参加して登録者を募ります。説明会には働きたいと考える多くの高齢者が訪れます。でも仕事内容を説明するとだいたいの方が「ここには自分に合う仕事がない」「今までの経験を生かせる仕事がない」と言って帰っていく。
皆さん、今までの経験の延長上で仕事を探そうとします。ですがそれではいつまでたっても仕事は見つかりません。新しい仕事にチャレンジしようという気概のある人だけが仕事に就けるのです。
過去の肩書にこだわる人や、プライドの高い人も続きません。こういったものは一度捨てていただきたい。「私は部長ができる」と言われても、そんな仕事はありません。高齢社では「あいさつは必ず自分からする」「過去の職位の話や自慢話はしない」といったことを就労時のお願い事項として挙げています。あとは「頭は下げるためにある」とも言っています。
こだわりを捨てさえすれば、高齢社にはさまざまな仕事があります。中にはこれまでの資格やスキルが生かせる仕事もありますが、「簡単だけどなくてはならない、必要な仕事」が中心です。
「そのような仕事で果たしてやりがいを感じられるのか?」と最初、思われる方も少なくありません。ですが、仕事を通して人に頼られ、喜ばれることが、やりがいにつながるのです。例えばマンションの管理人では、居住者の名前をしっかり覚えて、帰ってきたら「おかえりなさいませ」と声をかけると喜ばれます。高級マンションでは「おかえりなさい」じゃだめで「おかえりなさいませ」です。一見簡単そうですが、真面目で信頼できる人間性が求められます。誰もができる仕事ではないのです。
高齢社で仕事を見つけた方は、こうした心構えをすべて理解していますから、とても我慢強く、真面目で前向きな方が多いです。この冬、長野県の某ホテルの設備管理業務のため、3人の仲間を派遣しました。ホテルに住み込みで、機械室のボイラーがきちんと動いているかなど、各設備の点検、見回り業務を担っています。大雪の中、3人交代で24時間勤務をこなすのは大変な業務ですが、非常に頑張ってくれています。
Powered by リゾーム?