履歴書の写真と年齢だけで判断されても困る

 厳しい評価の裏にあるのが「高齢者は仕事ができない」と思う雇用者の思い込みです。適任だなと思って紹介しても、履歴書の写真と年齢を見るなり「ちょっと困ります」というパターンがほとんどです。履歴書の写真って、だいたい暗くてきれいに写っていないでしょう。それだけで判断されてはこちらも困ります。

 高齢者はまじめで、とても良く働くとメリットを訴えても、なかなか受け入れてもらえないのがつらいところです。残念ですが、これが労働市場における高齢者人材の扱われ方なのです。なので高齢社では少しでも雇ってもらえるよう、他の派遣会社に比べて時給を安く設定するなどして、訴求力を高めようとしています。本当はもう少し、時給を上げてもらいたいのですが、仕方ありません。

 

 一方で、こうした状況は変わるのではという期待もあります。景気が必ずしも良くない状況の中で、多くの社員を抱えなければならない定年延長のあり方は、果たして持続性があるのでしょうか。職務内容や労働時間を無限定にすることと引き換えに、社員の面倒を最後まで見る「メンバーシップ型雇用」は崩れつつあります。今後、働く高齢者が今まで以上に増えてくれば、個々人の働く目的に応じて職務内容やワークスタイルをはっきり定めて欲しいとするニーズはむしろ高まるのではないでしょうか。

 

 働き方としては、ジョブ型の派遣社員の方が向いていると思います。また雇う側も、仕事の範囲を明確にすれば高齢者は雇いやすくなると徐々に気づいてくるはずです。

高齢社ではどんな仕事があるのですか。

緒形氏:業務内容は、もともと東京ガスおよび関連企業の業務を請け負う会社としてスタートしたこともあり、東京ガスに関わるものが約6割です。創業者の上田研二氏は、東京ガス子会社の社長だったのですが、当時、新築マンション完成時のガス機器点火試験などの仕事がありました。土日の作業も多く、社員が他の仕事の合間に作業することもしばしば。人員確保にとても苦労していたのです。

 その一方で、東京ガスや関連会社を定年退職していた人たちは暇を持て余している様子です。「ならばOBたちに手伝ってもらおう」と、上田氏が立ち上げたのが高齢社の始まりです。「毎日が日曜日」のシニアであれば、土日の仕事も苦ではありませんし、取引先から割増料金をいただく必要もありません。

 東京ガス関連で多いのが、新築マンションの内覧会などで、東京ガス社員に代わってガス機器の説明をする仕事です。これは休日中心です。東京ガスの地域サービス全般を担う、東京ガスライフバルでの仕事もたくさん請け負っています。ガスメーターの開閉栓業務、機器の保守点検、電力自由化に伴い東京ガスとセットになった電気プランの営業、倉庫にある物品の出し入れや在庫管理、いろいろあります。

 今では東京ガス以外の仕事も4割あります。最近増えているのが、レンタカー営業所の受付業務。クルマを借りに来たお客様にカギを渡したり、クルマの出し入れをしたりする。返却後の掃除もします。レンタカー営業所は朝が早いので早朝勤務が求められますが高齢者は朝に強い人が多いので取引先から喜ばれています。あとは分譲マンションの管理人。最近ではさまざまな業種の受付業務も増えています。企業の経理、レジ打ち、駐車場の管理人、廃品回収などもあります。

 シニアならではの仕事をいかに開拓するか、若い現役世代と競合しないニッチなニーズをどれだけ拾い上げられるかが、高齢者の派遣事業を展開する上でポイントかなと思います。

かつては企業で部長などの高い職位に就いていた人が、こうした仕事でモチベーションを維持できるのでしょうか。

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