「60歳以上で気力、体力、知力のある人」を登録条件にする高齢者専門の人材派遣会社、高齢社(東京・千代田)。高齢者就労を「定年後再雇用」に限定せず、自分で仕事を選べる派遣会社を活用することで得られるメリットは大きいと訴える。一方で、雇う側、働く側双方の意識が変わらないと、マッチングが成功しない厳しい現実もある。定年後も仕事が見つかる人、見つからない人の違いはどこにあるのか。高齢社社長の緒形憲氏に聞いた。

定年後の就労を阻むものとは?(写真:PIXTA)
定年後の就労を阻むものとは?(写真:PIXTA)

「高齢社」とは、ユニークなネーミングですね。

緒形憲・高齢社社長(以下、緒形氏):小さいながらもキラリと光る会社を目指しております(笑)。2000年に創業し、今年で創業22年目を迎えました。シニア専門の派遣会社で、登録できる年齢は60歳以上。年齢の上限は設けていません。現在働いている最高年齢の方は81歳です。登録者の平均年齢は70.5歳で、登録者の年齢分布では70~74歳がボリュームゾーンになっています。

高齢者人材の働き口で真っ先に浮かぶのが「定年後再雇用」です。派遣業は珍しいのではないですか。

緒形氏:そうですね。当社の門をたたくのは、65歳で再雇用の期間が終了し、その後も仕事をしたいと考える人が多いです。今年4月から企業に70歳までの就労環境を提供する努力義務が課されますから、70歳未満の就労希望者が労働市場に出てきにくくなるため、高齢者の人材確保が難しくなるのではとみています。

緒形憲(おがた・けん)氏・高齢社社長</br> 1949年生まれ。72年に東京ガスに入社し、2002年群馬支社長。06年7月から栃木ガスの代表取締役社長を務める。高齢社を立ち上げた上田研二氏に誘われ15年に高齢社に入社し、16年6月から現職。
緒形憲(おがた・けん)氏・高齢社社長
1949年生まれ。72年に東京ガスに入社し、2002年群馬支社長。06年7月から栃木ガスの代表取締役社長を務める。高齢社を立ち上げた上田研二氏に誘われ15年に高齢社に入社し、16年6月から現職。

 確かに、実質的な定年延長は働く側にとってはありがたいのですが、企業側にとってはコスト増加や体力の衰えなどによる生産性の低下、適材適所の配置が難しくなる、といった課題もあります。若い人の活躍の場が少なくなり、モチベーションが下がるといった弊害が出る恐れもあります。

 こうした問題を解決するには、高齢者人材を一度「社外に出す」ことが重要なのではと思っています。そして派遣社員として登録してもらい、自分の体力や希望に合った仕事を選択できるようにした方が、責任感が生まれます。「自分で仕事を選ぶ」という行為がモチベーションを高めるきっかけになります。定年を迎える前の“現役社員”がやる仕事と、高齢者がやる仕事の線引きもしやすくなります。

 また当社は働く人の都合を優先した勤務形態を可能にしています。1つの仕事を複数人で分担する「ワークシェアリング」の考え方を取り入れることで、週3日程度の勤務も可能にしています。もちろん「毎日働きたい」という方もいらっしゃいますのでそれも歓迎です。こうした融通が利く点も、派遣業のメリットと言えるでしょう。

働く人のニーズに的確に応えられるメリットは大きいですね。ですが、実態は再雇用にこだわる人が依然多いです。

緒形氏:多くの高齢者が定年後も同じ会社で働きたいと考えるのは、一度社外で仕事を探そうとすると労働市場で厳しい評価にさらされる点が関係していると思います。賃金水準が大きく下がる上、仕事がなかなか見つからない。

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この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。