繰り下げ受給を台無しに
高齢者雇用を規定する3つめのファクターは年金でしたね。
清家氏:年金受給資格を得れば、年金給付で生活できるので、引退する可能性は高まります。年金というのは引退を可能にするための社会保障制度ですから、それは当然です。なんら問題とすべきことではありません。
問題は在職老齢年金制度です。これは働き続けると年金額が減額されてしまう仕組みで、年金制度が働き続けることにいわばペナルティーを課しているようなものです。さらにこの制度は、せっかくの繰り下げ受給の効果も台無しにしているのです。
繰り下げ受給とは、65歳で受給資格を得ても年金を受け取るのを我慢して先に延ばすと、その期間に応じて、月々の年金額が増えるというものです。これは働き続けることへの強いインセンティブになるはずですが、在職老齢年金で減らされた分は加算の対象にはならないのです。せっかくの就労を後押しする仕組みを、在職老齢年金が減殺してしまっているのです。
(関連記事:年金が減るから働きたくない? 制度が定年後の就労意欲そぐ)
税制にも課題はあります。年金は勤労収入ではないので、雑所得扱いになり、しかも公的年金等控除という控除もあります。ケース・バイ・ケースですが、多くの場合、同じ収入であれば、働いて収入を得るより年金で収入を得たほうが有利になる。民間企業に高齢者雇用を進めてもらうためにも、国はまず高齢者の就労を阻害している公的な制度を見直すべきでしょう。
高齢者にどんな仕事をしてもらうのか。頭を悩ませる企業も多いようです。
清家氏:高齢者にしてもらう仕事、という考え方自体すでに少し変ですね。今までやってもらっていた仕事をやってもらえば何も問題はない。高齢者だから、何か特別に仕事を用意するという発想がおかしくはありませんか。例えば企業が今時、「女性にやってもらう仕事がなかなかなくて困っているんですよね」と言ったら、変でしょう。
女性にやってもらう仕事がなくて困るというのは、かつて女性は一般職の事務しかやってもらわない仕組みにしていた時代の話です。高齢者にやってもらう仕事がなくて困るという企業があるとしたら、それは高齢者自身の問題ではありません。年を取ると、管理職になるとか、仕事を限定しているとか、そういった仕組みの問題だと思います。
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