今年4月から、70歳までの就労機会の確保を企業の努力義務とする改正高齢者雇用安定法が施行される。労働経済学の大家で、今回の法改正にも関わった慶応義塾学事顧問の清家篤氏は、深刻な少子高齢化と労働力不足を踏まえて、「高齢者の就労促進なしに、日本の経済社会の将来はない」と改めて強調した上で、「そもそも、『高齢者』と特別扱いすること自体がおかしい時代になってきている」と話す。女性の就労が当たり前になったように高齢者の就労は当たり前になり、テクノロジーもそれを後押しすると説く清家氏に、高齢者が活躍できる社会について聞いた。

(写真:PIXTA)

70歳までの就労機会の確保を企業の努力義務とする改正高齢者雇用安定法が4月から施行されます。ご自身も改正作業に関わられましたが、改正の理由や背景を教えてください。

清家篤・慶応義塾学事顧問(以下、清家氏):日本が世界に類を見ない高齢化を経験していて、これからさらに加速することが確実だからです。2025年には団塊の世代が全て後期高齢者になる。2040年ごろには団塊ジュニアが65歳以上になる。高齢人口比率は、最終的には2060年に40%ぐらいまで上昇しますが、高齢人口の絶対値で見ると2042年ごろに最も多くなり、ピークに達します。

 私は労働経済学者なので、少子高齢化をめぐっては、労働力に最も注目しています。労働力人口は現在、6700万人を少し超えるぐらいですが、厚生労働省の雇用政策研究会の推計によれば、何も手を打たないと、2040年には5500万人を割り込むと予測されているわけです。つまり、これから20年ぐらいの間に、労働力人口は1200万人以上も減少していくという予測です。

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清家篤(せいけ・あつし)
慶応義塾学事顧問。1954年東京生まれ、1978年慶応義塾大学経済学部卒業、92年同大教授。2009年慶応義塾長。17年から現職。現在、日本私立学校振興・共済事業団理事長や政府の社会保障制度改革推進会議議長も務める。 専門は労働経済学。『高齢者就業の経済学』(共著、日本経済新聞出版)、『雇用再生』(NHKブックス)など著書多数。

働き手の減少が社会経済に与える影響は甚大ですね。

清家氏:労働力が減るということは、需要と供給の両面で、非常に大きな成長制約になります。モノやサービスを生産する労働者の数が減るということは、生産性がぐんと上がらない限り、あるいは労働時間をぐんと伸ばさない限り、生産量の減少につながります。また、労働者の数が減れば、雇用者所得の総計も減る。従って、消費の減退につながります。

 要するに、需給両面で経済成長が鈍化、あるいはマイナスに転じて、一人一人の生活水準も低下しかねません。

 さらに、今のままですと、社会保障制度の持続可能性も低下するおそれがあります。社会保障制度は働く人が支えている。つまり働く人とその雇い主が払う社会保険料で基本的には維持されているので、働く人が減ってしまうということは、それだけ支え手が減ってしまう。結果として将来世代にものすごく重い負担がかかることになります。

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