生涯、上を目指すのは非現実的

仕事内容に応じて給料を払う。いわゆるジョブ型雇用ですね。一方で、当人からすると、定年を機に働き方が大きく変わることに戸惑いもあるのではないでしょうか。

今野氏:そうですね。でも、私は「我慢しなさい」と言っています。定年があろうがなかろうが、例えば70歳まで働こうとしたときに、ずっと上のポジションを目指して走り続けるつもりですか。長く働き続けるにはどこかでピークアウトしなければいけない。生涯現役というのは、そういう働き方をしなければいけないんですよね。

 私の実家は小さな商店を営んでいましたが、両親を見ていると、若いころは体力があるから仕事を増やしますが、途中からは体力に合わせて仕事を減らしていったんですよ。だから年齢に関係なくずっと働けたわけです。

ピークアウトは大切な観点ですね。

今野氏:ピークアウトはすごく重要ですね。60歳以降も年功賃金を払うなんて、考えられないでしょう。

 それでも年功制の是正は徐々にではありますが着実に進んでいて、「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」へという流れは、長期のトレンドです。定年を境に働き方や処遇の在り方が大きく変わってギャップに悩むという問題も解消されていくでしょう。

ピークアウトのきっかけと考えれば、定年も意味のある制度になりますね。

今野氏:降りていくのには勇気がいる。人間いつまでもできると思いがちです。何か外的なきっかけを加えた方が降りる決断がしやすい。それが定年制だと最近、思っているんです。定年制を廃止してもいいけれど、廃止するなら何か代わりのきっかけになるような仕組みを考える必要があるでしょう。

定年後再雇用は中途採用と同じ

なるほど。定年という言葉を使うかは別にして、60歳を節目にしようと。

今野氏:節目にしてキャリアをもう一度転換しようということです。そして、60歳以降も比較的いいポジションが欲しい、いい給料を得たいと思うなら、50歳ぐらいから準備をしておくと。

 定年を迎える人に私はよくこう言うんですよ。「会社が仕事を用意してくれると思っているのかもしれないが、それは甘い。60歳で定年になったときには、再雇用つまり雇用契約を結び直すのだから、あなたたちは中途採用と一緒です」って。中途採用者なら当然、自分の能力を武器にして、あなたの会社のこの業務に貢献できますと売り込むでしょう。

いずれにせよ、制度改正ももちろんですが、個人のマインドセットも重要になりますね。

今野氏:一兵卒に戻って、若い人間の下で働くのも別に構わない。長く働くというのはそういうことだ。こういう価値観というか文化をつくる必要があるんでしょうね。

 ピークアウトがあって、一兵卒になってもそれなりに頑張って働いて、徐々に引退に向かっていく。そんな世界にも例のない社会システムを、高齢化が最も進んだ日本で構築できれば、立派なことなんじゃないかと思っています。

この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。