前回まで、高齢者雇用の現状と課題をリポートしてきた。今回は、2040年の人口ピラミッドを見ながら、仮に74歳までを「生産年齢」としたときの姿を展望してみたい。
退職年齢の上昇は日本だけではなく、比較的“若い国”と思われている米国でも同じ。今後、高齢人材の活用が世界共通の課題となってくる。そのとき、日本は先陣を切って新たな成長モデルを世界に提示できるのか。

「人口ピラミッドの形を考えると仕方ないと思う」(40代後半、男性、人事・人材開発)
「『働きたい』のと『働かざるを得ない』は大きく異なる。年金不足により後者しか選べないから、仕事へのモチベーションが下がるのではないか」(40代後半、男性、情報システム)
日経ビジネスの独自アンケートに寄せられた声だ。いずれも、人口ピラミッドで大きく出っ張る40代後半の団塊ジュニア世代。今年4月から企業に課せられる、70歳まで雇用を継続する努力義務への複雑な思いを抱いている。これまで論じてきたように、人材のミスマッチが懸念される中、自らの将来を案じる姿が浮かび上がる。
団塊ジュニア世代は、現在の生産年齢において大きな一群を形成している。2020年における生産年齢人口(15~64歳)は約7400万人。それが、団塊ジュニアが66~69歳となる2040年には約5900万人へと激減する。
まもなく、1947~49年生まれの「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者に差し掛かり少子高齢化が急速に進む。2040年になると、日本の人口ピラミッドの形はしぼんでいくが、その中にかろうじて残っている膨らみが団塊ジュニアだ。
団塊ジュニア世代以降の人口が減っていく日本の姿を見れば、今の経済規模と社会保障水準を維持するには、生産年齢人口を増やすことが1つの解になるということは明かだろう。言い換えれば、2040年に65~74歳に到達する団塊ジュニアを含む高齢者層を、いかに長く、働き手としてとどめておけるかが鍵となる。
国の施策からも、こうした問題意識が透けて見える。今年4月から実施される70歳までの継続雇用措置は言うまでもない。2022年4月から公的年金の繰り下げ受給の受給開始年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられる背景にも、この現実がある。日本老年学会は2017年、「高齢者」の定義を65歳以上から75歳以上にすることを提言した。一昔前と比べて加齢による身体機能の衰えも遅くなっていることが議論を後押しする。
(関連記事:年金が減るから働きたくない? 制度が定年後の就労意欲そぐ)
ではどうするか?
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り2062文字 / 全文3145文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?