外見への偏見がなくなる? 精神のみが宿る「アバター」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて広がるリモートワーク。離れていても対人でのリアル感を生み出すために使われているのが「アバター」だ。パソコンやスマートフォンから仮想空間にいる自身のアバターを操作し、他者のアバターと交流する。仮想空間のアバターは仮の姿なので、生身の人間としての外見はそこにない。肉体はなく、精神のみがアバターに宿る。

アバターが「老い」をカバーする。写真はアバターのサービスを展開するクラスター(東京・品川)の事例
アバターが「老い」をカバーする。写真はアバターのサービスを展開するクラスター(東京・品川)の事例

 「アバターは大きく2つのものから解放してくれる。1つはコロナ禍で利用が増えているように、『移動』からの解放。そしてもう1つが『老い』からの解放です」。そう強調するのは、アバターのサービスを展開するクラスター(東京・品川)の加藤直人社長だ。

 アバターを高齢者向けに使うというニーズはまだあまり出てきていないようだが、仮想空間が私たちの生活に浸透すれば、世代を問わずに多くの人がアバターを使って仕事をするようになる。そうなれば、外見に起因するバイアス(偏見)はなくなりそうだ。

 業種、職種によって、浸透の濃淡はありそうだ。食べるという生身の行為が伴う飲食業を仮想空間に置き換えることは難しいが、製造業での研究や開発、設計のように比較的、頭の中で考える仕事は親和性が高い。仮想空間で3D(3次元)の設計を行い、それを複数人で議論することは既に行われている。

 肉体から解放されれば、仮想空間上で若作りもできる。高齢者が若者に、男性が女性、女性が男性の外見に変わることができる。洋服のように好きな顔や体形をまとうことも可能だろう。「老い」のみならず「ジェンダー(性差)」をはじめとする全ての外見からくるバイアスから解き放たれる可能性がある。

「眼鏡のようにアバターを使う日がやって来る」

 「みんなが普通に使っている眼鏡も、いわば視力の低下を補う“パワードスーツ”。アバターもそんな使い方がされる日が来るでしょう」と加藤氏は予測する。

 1947年に男性50.06歳、女性53.96歳だった日本人の平均寿命はこの約70年で30歳以上延びた。同時に、老いからくる生活や仕事におけるさまざまな支障を克服する技術が生まれ、今後も急速に広がっていくとみられる。多様な“パワードスーツ”が、高齢者が長く働き続けるうえで強い味方になってくれる。そうなれば、「老い」を過度に恐れることはない。

 次回は、高齢人材の就労意欲をそぎかねない、制度上の問題点を指摘する。お見逃しのないよう、シリーズを「WATCH」してください。

この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。