60~70代以降も働き続けたい――。意欲はあっても、逆らえないのが体力の衰えだ。そうした中、仕事の現場で使われ始めているのが、人の動作を支援する装着型ロボットのパワーアシストスーツ。コロナ禍で活用が進む「アバター(分身)」の技術も、老いに伴う外見の変化に起因する偏見からの解放につながる。高齢者が働くうえで強い味方になってくれそうな技術だ。
前回は、マインドセットの変革と知力や体力もスキルと同じように正確に把握することの大切さをリポートした。今回は、テクノロジーを使って、そもそも「老い」を克服する可能性を取り上げる。

重たい米袋を運ぶのは体にこたえるが、あと3年は仕事を続けたい――。
2020年秋、千葉県内で個人商店の米屋を営む60すぎの男性が購入したのが、装着型ロボットのパワーアシストスーツだ。パナソニックの子会社、ATOUN(アトウン、奈良市)が販売する70万円前後(実勢価格)のアシストスーツで、逆Y字型の器具を背中から腰にかけて装着する。
米袋を持ち上げるときと下ろすとき、袋を持ちながら歩いて移動するときの負担が大きかったが、アシストスーツの着用によって負担が大幅に軽減された。装着は数十秒でできて簡単だ。効果は事前に思っていた以上だったため、追加で腕をアシストする器具も注文した。
「61歳が若手」の林業でアシストスーツの導入検討
「働き手の高齢化が進み、さまざまな業種でアシストスーツを求める声が増えている」と話すのはアトウンの藤本弘道社長だ。スイカの産地、山形県大石田町では地元のJAがアシストスーツを複数台購入。スイカを集荷する際に地元農家が利用し、とくに高齢者に喜ばれている。
こうした集荷作業ではゴムやバネを使ったサポーターを体に巻いて使っている人が多いが効果は限定的。アシストスーツが作業効率を高めている。
「若手が入ってきてくれました」と声を弾ませるのは奈良県の山間部の林業従事者。「若手」は61歳という。
伐採した木を運ぶなど林業でも力仕事は欠かせない。就業者が減少し高齢化が深刻な林業でもアシストスーツの活用が検討されているという。
農業や林業といった第1次産業だけでなく、近年は人材不足が顕著な地方の中小企業からも引き合いがある。「人材募集の対象年齢を引き上げても、力仕事だと敬遠されてしまう。力仕事でも安心して作業できるようアシストスーツを導入される会社もある」(藤本氏)
アシストスーツで幅広い人材を呼び込もうとの考えだ。かつてはこうした器具を体に装着することに抵抗を感じる高齢者は多かった。今ではそんな抵抗感は薄れて、むしろ「使いたい」と前向きな高齢者が増えている。
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