今年4月から、70歳までの雇用延長が企業に努力義務として課せられる。前回は、高齢人材の雇用の吸収先として期待されているサービス業の状況と課題をリポートした。今回は、定年後の“再就職”を阻む要因を考える。大会社で管理職を経験した男性ほど「自分に合った仕事が見つからない」と嘆く傾向にあるという。このマインドセットを変えなければ、就労の機会を逃すことになる。では、どうしたらいいのか。

「自分の経験を生かせる仕事がない」
登録者の平均年齢が70.5歳という高齢者専門の人材派遣会社、高齢社(東京・千代田)の緒形憲社長は、就職説明会を開催した後、そう肩を落として会場を後にする男性を何人も見てきた。その多くが、定年まで大会社で管理職だった人たちだ。2000年に同社を設立し、首都圏を中心に高齢者向けに就職説明会を展開してきたが、今もその傾向に変わりはない。
「現役時代は大企業の部長など高い職位に就いていた方ほどプライドが高い。『男性・管理職・大会社』から、仕事を見つけるため、今からでも新しいことにチャレンジできるんだというマインドセットに変わらないといけない」。緒形社長は強調する。
年金などの社会保障制度を維持したい国は、70歳までの継続雇用を企業に求めることで、国民に70歳まで働くことを求めている。だが、65~69歳の就労率を見ると現在は48.4%にとどまっており、生産年齢人口(15~64歳)の77.7%と比較すると大きな開きがある。
高齢者の就労率の低さは、現行制度では65歳から年金支給が始まるためでもある。しかし、65歳以降の就労率を高めていくには、凝り固まったマインドセットが邪魔して自らのスキルに見合った職を見つけられないという状況から脱却する必要がある。
日経ビジネスの独自アンケートでは、定年後に働いていない回答者のうち、半数近くが、「定年後も働きたい気持ち」があったと回答している(アンケート結果は後日詳報する)。その中には「気力・体力があるのに社会から切り離されるのは自分の老化を加速されるみたいだ」(60代後半、男性、無職)と、やるせない気持ちを訴える声も少なくない。
70歳までの雇用延長に本気で取り組むのであれば、社会全体で「働きたいのに働いていない」という潜在的な高齢人材を流動化させる仕組みが不可欠だ。
誰にでも「専門性」はある
では、どうしたらいいのか。人事管理に詳しい学習院大学の今野浩一郎名誉教授は、「大企業でしっかり長く務めた人には必ず何か専門性がある。それを生かせばいい」と話す。
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この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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