前回は、タニタや大和証券の事例を基に、主にホワイトカラーにおける高齢人材を活性化させる取り組みを見た。今回は、小売りや外食といったサービス業の現場をリポートする。

 サービス業では慢性的な人手不足から、高齢者雇用がいち早く進んでいる。セルフレジやスマホ決済など技術の活用も追い風だ。最新のテクノロジーが高齢者にとって負担となる作業を軽減し、働きやすい環境が広がりつつある。だが、AI(人工知能)など技術革新はこれからも続き、仕事をどんどん代替していく。それでも高齢人材に居場所はあるのか。

セブン-イレブン・ジャパンは各地で高齢者向けにレジ打ち体験会を開く(現在はマスクを着用して業務)

 慢性的な人手不足に悩むコンビニエンスストア業界。新型コロナウイルスの感染拡大以降、それまでコンビニ店舗の労働力の貴重な戦力となってきた留学生など外国人の渡航が制限された。そんな状況の中、救世主として期待されているのが、高齢人材だ。

 セブン-イレブン・ジャパンは、全国各地で高齢者を対象にしたアルバイト・パートの就職説明会を実施している。2013年に福岡県と初めて高齢者の積極雇用を含む包括連携協定を結んで以来、現在では出店先の自治体に拡大。特に高齢化が加速する地方の店舗では、こうした取り組みにより高齢者の採用を積極的に進めてきた。その典型が北海道である。

 「最新型のレジなので、高齢の方にも使いやすくなっています。ぜひ体験してみてください」

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する前の2020年1月まで、セブンは本部主導で自治体とも協力しながら、高齢者を対象にした就職説明会を頻繁に開催してきた。会場には実際にレジを持ち込み、高齢者が接客業務を体験できる。2015年以降、セブンが出店している道内の120の自治体と高齢者雇用を促進する協定を締結。高齢者向けの就職説明会は2017年から開催しており、参加者はこれまでに約4000人に上る。そのうち少なくとも約1000人が面接を受けに店舗に足を運んだ。

 コロナ禍では以前のように大々的には説明会を開けないが、参加人数を絞るなど感染防止対策を徹底した上で開催している。少子高齢化が深刻な北海道では、「働き手として、高齢者は貴重な戦力」(セブン-イレブン・ジャパン総合渉外部北海道ゾーンの松坂隆広マネジャー)となっている。

 高齢者がコンビニ店舗で働く上で、最も気にするのがレジを使いこなせるかだ。コンビニのレジ業務は、バーコードをスキャンするだけでいい商品の決済だけではなく、バーコードが付いていない揚げ物や中華まんなどの決済や公共料金の支払いなど、複雑な作業をこなさなければならない。

 だが、何十年と進化を続けてきたレジは、現在はモニターさえ見れば次に何をすべきか一目瞭然だ。商品そのものにバーコードが付いていない揚げ物や中華まんは、モニターに写真と名前が一覧で表示され、該当するものを選んでタッチする。公共料金の支払いも、客から受け取った用紙のバーコードを読み取ればいい。提供するサービスは多様化、複雑化していても、技術の進歩で店員の負担はかなり軽減されている。

 「実際に使ってみて、自信を付けて帰っていかれる人は多い。90代の方が参加したこともある」と松坂マネジャーは言う。連載3回目では、データを基に65~69歳を超えると仕事に支障が出る人の割合が急速に上昇していく実態を示した。日経ビジネスが実施したアンケート調査でも、定年後に働く中で体力の衰えに不安を感じている人の割合は約44%、記憶力や学習能力の衰えに不安を感じている人の割合は約35%にも達している(アンケート結果は後日詳報します)。だが、コンビニにおけるレジの進化は、こうした高齢人材が抱える不安を少なからず軽減できることを示している。

現役時代の時給を定年後も保障

 高齢者が就労を続けられるよう、処遇や働き方を見直す動きもある。2016年12月、首都圏で食品スーパーを展開するサミットは、パートタイム社員の定年を60歳から65歳に引上げ、定年後も10年間、75歳までは働き続けられる環境を整えた。正社員の場合には60歳の定年後、65歳まで嘱託社員、その後はパート社員として75歳まで働くことができる。

 背景にあるのは深刻な人手不足だ。1963年創業のサミットでは、2000年代から大量退職が続いている。人事部の安田大輔マネジャーが「正社員もパートも採用から3年以内の退職率が高く、3分の1が入れ替わるイメージ」と話すように人材の定着にも課題がある。

続きを読む 2/3 バリアフリー対応進める丸亀製麺

この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。