
千葉県船橋市に製造拠点を構える平和産業。この中小の金型企業は今、コロナ禍の直撃を受けて、高齢者雇用をめぐり苦しい決断を迫られている。
1963年創業の同社は92年から航空機部品の生産をスタートした。会社全体の売上高の6割を占めるほどに育ち、成長のけん引役となっている。航空機部品の好調な受注に支えられて、平和産業はここ数年、前年比10%程度の成長を実現してきた。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ危機に直面し、事態は暗転する。
航空需要の落ち込みを受けて、米ボーイングが減産を決めた余波は同社にも及び、民間航空機のエンジンや機体向けの部品をめぐる需要が激減。持続化給付金の支給を受けてなんとか持ちこたえているものの、赤字転落も現実味を帯びている。
コロナ危機が迫る高齢者からの「人員整理」
苦しい経営状況の中でやむなく同社が実施したのが、高齢社員を対象にした事実上の人員整理だ。2020年4月時点では、60歳以上の社員は13人いたが、これまでに5人が退職を決めた。八尾泰弘社長は「赤字回避は私の責務」と表情を引き締めつつ、今年8月までにさらに3~4人に“リタイア”をお願いする必要があると打ち明ける。
平和産業は、高齢者雇用では先進的な企業だ。05年に先代である父の後を継いだ八尾社長は、就任早々に60歳定年制を廃止し、退職の1カ月以上前に本人がリタイアを宣言する仕組みに改めた。理屈上は本人に働く意志がある限り、仕事を続けることができる。
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