これから深刻化する人手不足の「救世主」として期待される高齢者人材。前回の記事でも書いたとおり、今年4月から企業には70歳までの雇用努力義務が課せられる。だがAI(人工知能)や機械化の進展が、高齢者人材の雇用を生み出している職種を「消滅」させようとしている。時代の変化に即したスキルを身につけなければ仕事が見つからない。そんな時代が、団塊ジュニアが定年を迎える2030年にも訪れようとしている。

高齢者雇用は今後、社会的な問題に。写真はイメージ(写真:アフロ)
高齢者雇用は今後、社会的な問題に。写真はイメージ(写真:アフロ)

 まず、下のグラフを見てほしい。2030年時点の人口ピラミッドである。

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 2030年も現在と同じように60歳定年制を取り入れている企業が多いとすれば、定年間近の年齢層に大きな固まりが控えていることが分かるだろう。いわゆる「団塊ジュニア世代」だ。団塊ジュニアは2020年時点で46~49歳。2030年には56~59歳になっている。役職定年制が導入されている企業なら、管理職のポストを剥奪(はくだつ)されている場合が多いだろう。そして、いよいよ定年後にどのような人生を歩むのか、大きな選択を迫られている。

 同じ会社で再雇用してもらうのか、他社に転職するのか。業務委託や派遣などの形態で働くのか。起業するという選択肢もある。もちろん、働かずに悠々自適の生活をする、という人もいるだろう。

 その中で、大きなボリュームとなると考えられるのが再雇用だ。高年齢者雇用安定法では、2025年からは全ての企業で従業員が希望すれば65歳まで雇用しなければならないと定めている。そして今年、21年4月からは、70歳まで雇用を継続する努力義務が発生する。

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団塊ジュニアが突入する「70歳“定年”パニック」

 新型コロナウイルスが日本を襲う直前の2019年12月、有効求人倍率は1.57倍と高水準での推移が続いていた。足元はコロナ禍で有効求人倍率は1.06倍(20年12月)まで落ち込んでいる。だが、日本の生産年齢人口(15~64歳)は、現在の約7400万人から2030年には約6800万人へ減少。団塊ジュニアが70歳目前となる2040年には、約5900万人へと急減する。

 生産年齢人口の減少だけを見れば、この先、人手不足は深刻化する。70歳までの継続雇用措置には、こうした働き手の急減少を緩和する狙いもある。しかし、企業にとっては継続雇用によって人件費の負担増のみならず、厚生年金など社会保険関連の負担も増すため頭の痛い話だ。

 そして、とりわけ多くの企業の人事担当者が今後の課題として口をそろえるのが、団塊ジュニアの処遇である。ここ最近は多くの企業で、年功序列的な人件費高騰に伴って50代のいわゆる「バブル世代」の処遇が喫緊の課題となっており、同世代を対象としたリストラが活発に行なわれている。だが、その次には一定割合のボリュームを占める層として団塊ジュニアの処遇が課題となる。

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この記事はシリーズ「70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。