「コロナで仕事が減り、残業も少なくなったせいで賃金が結構下がりました。給料は以前に比べ月に8万~10万円、会社の業績悪化との連動も含め年収では100万円を超える減額になって、それを補うためというのが1つの理由でしたね」──。ある大手メーカーの生産管理部門でラインの操業管理などを担当していた太田幹雄さん(仮名)は、淡々とした表情でそう話す。太田さんは昨年春から始まった在宅勤務をきっかけに、社外の仕事も請け負う副業ワーカーとなった。

 フリーランスへの仕事仲介などを手がけるランサーズの推計によると、本来の勤務先があり、他の仕事もこなす太田さんのような副業ワーカーは2020年2月初め時点で約409万人。2社以上の企業と契約ベースで仕事をする「複業型ワーカー」は約281万人に上るという。20年夏、同社が副業ワーカーを対象に実施した調査では約3割が「新型コロナウイルスの感染が本格化した後、副業を始めた」としており、さらに増加した可能性もある。

(写真:共同通信)
(写真:共同通信)

 今や副業は珍しくなくなり、一部は「次の段階」に動きつつあるようにも見える。太田さんが副業を始めたのは収入減を補うとともに、自身の将来への展望を開くためでもあった。太田さんの専門領域は、膨大なデータを基に多様な分析をしていく数値解析。本業の会社では「生産ラインの同じ機械で同じ製品をつくっても時間や日によって品質に変化が起きる。その原因がどこにあり、どう対策を取ればいいかを分析したり、問題の解消にはどんな設備投資が必要かを計画したりする」(太田さん)ことが主な仕事だった。

 副業はそのデータ分析のスキルを生かしたものだったが、実はIT(情報技術)業界に転職することを考えての準備でもあった。「ITの世界は、自分の力で分析をして稼げることを示さないと、認めてもらえない」(同)ため、いわば実績づくりでもあった。そして年末には実際にIT企業に転職した。

 もちろん、副業には出勤前の早朝や帰宅後の数時間を充て、会社の仕事には全く影響させなかった。その上での転出である。一見、どの時代にもある転職の姿が今日風になっただけのようでもある。だが、子細に眺めればやや異なる姿も浮かぶ。

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