サービスにしてもプラットフォームにしても、規模が大きければデータは数多く集まり、AI(人工知能)も生きてくる。だが、事業の初期は目の前の一人の顧客の満足度を向上させたほうがいい。Kaizen Platform代表取締役の須藤憲司氏の連載3回目は、デジタル化で変わる顧客体験に焦点を当てる。

(写真:的野 弘路)

 前回はユーザーデータとプラットフォームの関係性や、サブスクリプションと機械学習の相性が良いことなどをお話ししました。

 ユーザーデータの話については、一点、とても大事な観点があります。データが効果を発揮してくるのは、規模が相当以上に拡大してからだということです。

 「データメジャー」といわれるような会社には、10億人や20億人といった規模の行動・取引データが豊富にあります。データが豊富にあれば、AI(人工知能)による機械学習による効果も指数関数的に増えていきますから、他社と比べて優位に立てます。

 つまり、利用者数の規模が小さいときのデータでは、それほどAIも賢くはならないわけです。「データの時代」などと言われますが、数十万件程度のデータ量であれば、人力で分析したほうがより良い効果が望めるかもしれません。事業の初期はデータ量が当然少なく、AIにはさほど期待できないのです。

データ活用よりもまずは「一人」の満足度

 では、規模感がまだ小さいときには何をすればよいのでしょうか。私は、むしろ「n=1」のデータを重要視して、突き詰めたほうがいいと考えます。データよりも「デジタルを活用することによって顧客体験をいかに良くできるか」というDX(デジタルトランスフォーメーション)を志向すべきでしょう。実際に使ってくれる一人の満足度をとにかく高めていった先に、データが効いてくる領域が見えてきます。

 問題は、いかにしてデジタルを活用することで顧客体験を良くできるかにかかってきます。それを考えるためには、人にとっての「価値」とは「交換価値」と「体験価値」に分かれることを踏まえた上で考えると、分かりやすいと思います。交換価値とは「お金で買える価値」であり、体験価値は「お金に換えづらい価値」といえます。そして、2つの差は分解可能か否かにも表れます。

 交換価値は、サービスのバリューチェーンによって分解できます。例えば、ステーキ店を営んでいるとして、焼く前の熟成肉を販売するならばEC(電子商取引)になります。それを焼いて、持って帰ってもらうとテークアウト販売。焼いてから配送までを担えばデリバリービジネスです。

 一方で、体験価値は分解しづらいものです。家で焼くステーキと、店舗で注文したステーキで食べている肉そのものは同じですが、体験するシチュエーションが異なります。そこで、体験価値は「同期的/非同期的」「一方向/双方向」という4象限に分けて考えるのが効果的です。

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