企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の成否と進捗を分ける要因とは何なのだろうか。『90日で成果をだす DX入門』の著者であるKaizen Platform代表取締役の須藤憲司氏による連載2回目は、以前より叫ばれていた「データの重要性」をテーマに挙げる。

(写真=的野 弘路)

 前回は新型コロナウイルス感染症の拡大によって、世界が非対面非接触のビジネスに変わっていく過程と、それによって浮き彫りになった「コロナ抵抗力」とも呼ぶべき企業競争力の新機軸としてのDXについて見ていきました。

 ビジネスが激変していく中で、今後の鍵となる要素がユーザーデータです。現在の世の中はGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)と呼ばれる企業群が、一国の人口を軽く超える顧客基盤を背景に、本来の事業ドメイン外へと歩を進めています。

 グーグルやフェイスブックのようなプラットフォームを手がける企業の恐ろしさは、消費者個々人の行動履歴を基に、好みやクセを把握している点です。数多くのサービスを広くユーザーに提供するプラットフォーム事業者は、一人ひとりがそこで「何をしたのか」といった行動データを収集できます。

 例えば、ウェブ検索を提供するグーグルであれば、どの国籍を有する人が、どういった言葉で検索し、どのようなページを開いたのかといった行動履歴を追えます。さらに、表示していたページ画面のどこに興味を持って動きを止めたのかも分かります。

 このように、プラットフォーム事業者は大量のユーザーデータを集めた後に、それをAI(人工知能)に機械学習させることで、個々人により最適な検索結果を表示できるようになります。これを一般的に「パーソナライズ」と言います。いわば旅館の女将が顧客一人ひとりの好みを観察しながら把握し、対応してくれるような世界を無制限に実現できるようになるわけです。

 現在では「カメラ」と検索すれば、検索者のこれまでのページ表示履歴などからパーソナライズ化し、ユーザーに合わせて「コンパクトカメラ」と「デジタル一眼レフ」の表示順序を切り替えたり、あるいは、東京在住者には、基本的に九州地方の広告は表示されないようになっていたりします。

 しかも、東京在住者が接続情報などから九州にいると分かれば、すぐに表示の優先度を変更します。こうして消費者の状況、好み、興味をプラットフォームはより理解していくのです。

 そうなると、従来は自分で能動的に検索し、選んで買うのが当たり前だったのが、プラットフォームによるレコメンド(「この商品を買っている人は、ほかにもこのようなものを買っています」といったお薦めや、興味を抱かれやすいものを推薦する機能)や、友人がツイッターやフェイスブックといったSNSで薦めている商品を買うといった「受動的な購買」も増えます。いわば、ウェブやSNS(交流サイト)上で消費者が消費者を生み出しているのです。

 そもそも「一般消費は衝動買いが9割」という世界です。コンビニを訪れる際、特定の商品のためではなく、何気なく商品棚から選ぶことがほとんどではないでしょうか? そのような一般消費の衝動買いがネット上でも起きるようになったのが現在で、それを促すデータを持っているのはプラットフォームです。だからこそ、彼らが高い競争力を持っているわけです。

 例えば、セブンイレブンには全世界で1日6400万人が来店していても、それが特定の「誰か」までは分かりません。そのため、来店する一般客100人が好むような店づくりをします。ところが、アマゾンのようなデジタル空間上にあるプラットフォームは、来店者の行動データから「買いそうなもの」を個別最適で見せてきます。その精度も利用されるほど向上していきます。我々が使うほど機械が学習していく強みは、人力では再現できません。

 その動きが加速していった先にある方向性の一つとして、あらゆるメーカーが消費者とデジタルで直接つながり、ビジネスモデルが定期購買型の「サブスクリプション」へシフトしていくと考えています。

続きを読む 2/2 構造変化を起こしやすい業態の6つの条件

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