「執念なき者に発明はない」「考えて、考えて、(血尿が出るぐらい)考え抜け」。令和のこのご時世、“普通の会社”の幹部が日々こんな発言をしていたら、「パワハラだ」「ブラック企業だ」などと世間からたたかれてしまうかもしれない。

 けれども、この会社ではそうはならない。安藤百福(ももふく)氏が創業した日清食品ホールディングス(HD)。ファウンダーの教えにのっとり、常に執念を持って考え抜く姿勢こそが成長と成功に導く。今の経営陣をはじめ皆、本気でこう考えているからだ。

安藤百福氏は1971年にカップヌードルを開発。今、世界累計販売は450億食を誇る

 「仕事を“戯れ化”せよ」──。百福氏が残した言葉の多くは、仕事への向き合い方に関するものだ。戯れ化とは、我を忘れるほど無我夢中で仕事に励め、さすれば疲れることすら忘れる。そんな意味が込められている。

 もっとも、NHKの連続テレビ小説「まんぷく」のモデルにもなった百福氏の人生は、常人では軽々に「戯れ」とは表現できないほど、激動、波乱の要素に満ちている。

常人には「戯れ」に見えない壮絶な人生

 台北市でのメリヤス販売に始まり、国内で軍用機のエンジン部品、不動産に製塩、漁業と、身内ですら、百福氏がいったいいくつの事業を手掛けてきたのかすぐには数えきれない。

 百福氏に襲いかかった憂き目に関しても、脱税の容疑をかけられGHQ(連合軍総司令部)に投獄された、理事長を務めていた信用組合が破綻し無一文になったなど、こちらも枚挙にいとまがない。百福氏は戦後の闇市のラーメンの屋台に並んだ人々の姿を見て、今で言うインスタントラーメンを作ろうと決意。大阪・池田の自宅の裏庭に小屋を建て、開発に身をささげた人生のアウトラインは、その深さは別にして、多くの人が知るところだろう。

 日清食品HDの安藤宏基社長・最高経営責任者(CEO)は、百福氏の次男で、父の背中とまさに「麺にとりつかれた人生」を幼少期から間近で見てきた1人だ。ただ宏基氏であっても、会社を託された後、「戯れ」の真意を社員に理解させ、具体的に事業を進めていくにはだいぶ時間を要したと明かす。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1852文字 / 全文2720文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題