投資判断の遅れは致命傷に
かつて、国主導で業界を保護する「護送船団方式」が批判を受けたことから、「特定産業の振興に動きづらい雰囲気が経済産業省内に残っている」と経産省OBは明かす。時代は一巡し国や地域ぐるみの総力戦が始まっている。
日本の産業政策が出遅れたのは確かだが、まだ負けてしまったとは言い切れない。バイデン政権が始動した米国や、東南アジアなどの新興国が電池産業を本格的に拡大するのはこれから。脱炭素に向けて車載電池市場が数倍に膨らむのは確実だ。「マーケットについていくためには数千億円規模の投資が必要だが、生産段階での投資判断の遅れを日本メーカーは繰り返してきた」と野村総合研究所の風間智英上席コンサルタントは指摘する。
韓国のLG化学は20年12月期決算で前期比3倍の約1000億円の純利益を確保した。海外工場も含めた積極投資の果実を刈り取りつつある。先行投資が必要な電池の生産では、リスクを取りたがらない企業姿勢がネックとなる。「高額な最新製品を買ってくれるのは海外の電池メーカーだけ。低成長しか経験したことがない日本企業の経営者はリスクを取って投資をしようという気概が感じられない」。ある設備機器メーカーの幹部はそうこぼす。
研究開発や技術力で先行していた日本企業が、国際競争の中で次第に存在感を失っていく──。過去、半導体や液晶分野が陥った失敗の物語を繰り返さないため、そして自動車産業の競争力を保つためにも、電池産業で勝ち残るための国を挙げた戦略が必要だ。
環境(Environment)とエネルギー(Energy)。2つのEが主要各国が炭素中立の目標とする「2050年の世界」を制する競争軸になる。電池産業の行方が試金石になるのは間違いない。
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