PPESの主要供給先のトヨタは19年実績で国内新車販売の約4割が電動車だが、これを急ピッチで引き上げる。25年ごろまでに全車種で電動車モデルを投入し世界で年間550万台の電動車販売を目指すという。

 同社の豊田章男社長は、「電動化イコールEVという風潮があるが、CO2排出削減に果たすHVの役割は大きい」とくぎを刺しながらも、昨年、高級車ブランド「レクサス」と超小型モビリティーでEVを発売。「全方位」で電動化を進めており、20年代後半にEVや燃料電池車(FCV)などゼロエミッション車(ZEV)の世界販売で年間100万台突破を視野に入れる。

 トヨタでは「この10年で電池の研究開発に関わる人間が数倍に増えている」(関係者)という。エネルギー密度が高く急速充電もしやすい次世代電池として期待される、全固体リチウムイオン電池(全固体電池)を搭載した車の20年代前半の発売を目指している。

 1月には中国のEVスタートアップの上海蔚来汽車(NIO)が22年に全固体電池を搭載すると発表し、話題を呼んだ。トヨタ関係者は「量産化する上では、絶対的な安全性の確保が必要。甘いものではない」と、新興のライバルを横目に静かな闘志を燃やす。

「国策化」する電池産業

 本連載でこれまで見たように、車やエレクトロニクス、エネルギーといった重要産業の基盤となる電池は、半導体やワクチンのように、国家にとっての戦略物資となっている。

 欧州連合(EU)の欧州委員会が進める電池のリサイクルに関する規制案も、「環境政策の姿を借りた域内の企業・産業保護政策」だというのが、専門家の共通見解だ。

 コンサルティング会社アーサー・ディ・リトル・ジャパンの粟生真行マネージャーは、「欧州の電池材料大手ユミコアが再生材向けに不純物を取り除く抜きんでた精錬技術を持っており、ドイツに工場を建設するCATLもユミコアから調達することになりそうだ。域内に利益を残す、こうした攻めの政策で日本は2周差をつけられている」と指摘する。

 日産子会社でEV「リーフ」の電池リサイクルを手掛けるフォーアールエナジー(横浜市)の牧野英治社長は、「EVが本格普及すれば、使用済み電池の再使用や再利用の技術は、国際競争力に直結する」と話す。

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