『ファクトフルネス』が100万部を突破した。本書では感染症の専門家である著者が、人間は「焦り本能」「恐怖本能」などにとらわれ、データやファクトを基に考えられない理由やファクトフルに考える方法を解説している。ところがコロナ禍では、どのデータを見るべきか、何をどのくらい怖がるべきなのか、判断しにくいのも事実だ。どうしたら「ファクトフルネス思考」を実践できるのか、日常で役立つデータを読み解くリテラシーやスキルをどう身につければいいのか。『シン・ニホン』著者であり、イシューを立て、分析的に考えることの重要性を10年以上も前から啓蒙している安宅和人氏に、『ファクトフルネス』の担当編集者が聞いた。その前編。

豊富な統計データを基に書かれた安宅さんの著書『シン・ニホン』は、15万部を超えるベストセラーになりました。同じくファクトやデータを基に考える習慣について書いた『ファクトフルネス』も日本で100万部を超え、データを基に考えることが重要だととらえている人が増えているようです。ところがコロナ禍になると、多くの人がとにかく怖がったり焦ったり、逆にただの風邪と断言したりということが起こりまくっています。『ファクトフルネス』の編集を担当した私自身も、どんなデータを集めればいいのか、そのデータをどう判断するのか、身近な現在進行形のことでファクトフルネスを実践することの難しさをしみじみ実感しています。

安宅和人氏(以下、安宅):実際にファクトフルに考えることは、とても難しいことなんですよ。最初はできなくて当たり前です。

<span class="fontBold">安宅和人(あたか・かずと)<br>慶応義塾大学 環境情報学部教授/ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)</span><br>マッキンゼーにて11年間、幅広い商品・事業開発、ブランド再生に携わった後、2008年からヤフー。2012年よりCSOとして戦略全般を担当。2016年より慶応義塾SFC(現兼務)。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)基本計画専門調査会委員ほか公職多数。データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。都市集中型未来に対するオルタナティブ創造を目指す一般社団法人『残すに値する未来』代表。東京大学生物化学専攻 修士(理学)。イェール大学脳神経科学Ph.D.。著書に『<a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4910063048/" target="_blank">シン・ニホン</a>』(NewsPicks 2020)、『イシューからはじめよ』(英治出版 2010)ほか。</a>
安宅和人(あたか・かずと)
慶応義塾大学 環境情報学部教授/ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)

マッキンゼーにて11年間、幅広い商品・事業開発、ブランド再生に携わった後、2008年からヤフー。2012年よりCSOとして戦略全般を担当。2016年より慶応義塾SFC(現兼務)。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)基本計画専門調査会委員ほか公職多数。データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。都市集中型未来に対するオルタナティブ創造を目指す一般社団法人『残すに値する未来』代表。東京大学生物化学専攻 修士(理学)。イェール大学脳神経科学Ph.D.。著書に『シン・ニホン』(NewsPicks 2020)、『イシューからはじめよ』(英治出版 2010)ほか。

できるようになるには、どうしたらいいでしょうか。

安宅:分析の訓練が必要です。「何が分かったら答えが出るのか」を考える訓練です。つまり、何に答えを出す必要があるのか、つまり答えを出すべき問い――イシューを見極める、その上で何を調べて、どんな軸で、何を比較したらいいのか考えるということです。いわゆる「分析設計」です。僕らのように日常的にこういうことをやっている人にとっては空気のようなことですが、多くの人は訓練をしていないので、この能力が身についていません。分析設計までできたら、あとはデータを持ってくればいいわけです。

 多くの人は、「誰かが立てた問いに対して、誰かが分析した結果を見る」ことしかしていません。見ればいいだけだから簡単ですが、それだと自分の問いに対しての答えは出ませんよね。また既存の分析を見て、自分のイシューに対してダイレクトに答えが出ていることは、まずまれです。答えが出ていればそもそもイシューじゃないのだから当然ですが。ここが、ファクトフルネスの思考を身につけられるかどうかの大きな壁だと思います。

続きを読む 2/3 自分は何が知りたいのか、「問い」を言語化する

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