いまロボット掃除機、ドラム式洗濯乾燥機と並んで「新・三種の神器」と呼ばれている食器洗い乾燥機だが、最も古くから同神器に数えられているのが食器洗い乾燥機だ。2003年1月に施政方針演説を行った小泉純一郎内閣総理大臣(当時)が昭和30年代、40年代の三種の神器を紹介しつつ、新・三種の神器として「カメラ付き携帯電話や薄型テレビ、食器洗い機など、新しい時代を捉えた商品の売れ行きは伸びています」と語っている。

 国内で食器洗い機が登場したのは1960年で、パナソニックが回転噴射方式の電気自動皿洗い機「MR-500」を発売したのが最初だった。しかし大型で価格も高かったこともあり、食器洗い機が普及し始めたのは1990年代に入ってからのことだった。

パナソニックの食器洗い乾燥機生産から50周年までの歴史(パナソニックのプレスリリースより)
パナソニックの食器洗い乾燥機生産から50周年までの歴史(パナソニックのプレスリリースより)
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 内閣府が食器洗い機の普及率調査を開始したのが2005年3月以降なのでそれ以前のデータはないが、パナソニックの調べによると1990年の時点で普及率は2.1%とかなり低い。当時の販売台数は卓上タイプ、ビルトインタイプ含めて約15万台と市場規模は小さかったが、04年には約98万台まで上昇(経済産業省「生産動態統計調査/機械統計編」より)。それをピークに09年には約57万台まで落ち込んだものの、現在は70万~80万台の市場規模で推移。内閣府「消費動向調査」によると2020年3月時点での普及率は34.8%に上っている。まだまだ普及率は低いようにも思えるが、ドラム式、縦型含めた洗濯乾燥機の普及率が43.3%(同)なのを見ると、かなり普及してきていると考えてもいいのかもしれない。

食器洗い機の販売台数と普及率の推移
食器洗い機の販売台数と普及率の推移
販売台数:経済産業省「生産動態統計調査/機械統計編」より
普及率:内閣府「消費動向調査」より
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 卓上タイプとビルトインタイプの比率については不明だが、マイボイスコム(東京・千代田)が2019年2月に実施したアンケート調査によると、食器洗い機の所有状況は卓上タイプが8.6%、ビルトインタイプが21.3%となっている。同社が2004年から継続している調査データによると、普及率はほぼ横ばいで、卓上タイプが減る一方でビルトインタイプが増えているというのが興味深い。新築住宅やリフォームなどでビルトインタイプの導入が進むものの、場所を取る卓上タイプが敬遠されているという背景があるのかもしれない。

 ここでは卓上タイプの食器洗い乾燥機を紹介していきたいが、ここ数年で大きな動きを見せ始めている。

 1990年代には多くの大手家電メーカーが食器洗い機を製造販売していたのだが、先ほど紹介したように食器洗い機の普及が伸び悩む中で、2005年には日立製作所や三菱電機、三洋電機、09年には象印マホービンが最後のモデルを販売した後に撤退。それ以降はしばらくパナソニック“一択”の状況が続いていたのだ。

 2012年には設置面積を従来比約40%削減したコンパクトな「プチ食洗」シリーズを市場投入するなどして新規需要開拓を進めてきたが、こうした状況が一変したのが2018年のことだった。新興家電メーカーのエスケイジャパン(福岡県筑紫野市)が8月に工事が不要な着脱タンク式の食器洗い乾燥機「SDW-J5L」を発売。10月には三洋電機の冷蔵庫事業と洗濯機事業を継承し、中国ハイアールグループの日本法人として生まれ変わったアクア(東京・中央)が送風乾燥機能付き食器洗い器「ADW-GM1」を発売した。

 その後も19年にはシロカ(東京・千代田)「SS-M151」やアイリスオーヤマ(仙台市)「ISHT-5000」、20年にはAINX(アイネクス、東京・港)「AX-S3W」やサンコー(東京・千代田)「ラクア SSTDWADW」など、新興家電メーカーから続々とタンク式の食器洗い乾燥機が続々と市場に投入されている。2年前の“パナソニック一択”から一気にプレーヤーが増えた状況だ。水栓工事が必要なタイプは現状パナソニックとアクアだけだが、メーカーやモデルが増えたことでより選びやすくなったことは間違いない。

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