
サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会でクロアチア代表に敗退しベスト16に終わったものの、日本代表の大健闘は、英国でも大いに取り上げられ、英国に住む多くの日本人も、少しだけ鼻の高い思いを味わうことができた。
多国籍・多文化のロンドン中心部とは異なり、筆者の自宅のあるロンドン郊外の小さな町では、ほぼ白人それも英国人が圧倒的多数を占める。筆者は唯一の日本人どころかアジア人といった位置づけとなり、普段はこんなローカルな土地にわざわざ住んでいる変わり種の外国人として認識されている。それが、ドイツ戦やスペイン戦の翌日には、娘の学校で顔なじみとなった父兄はおろか、近所の商店街を道行く人々までもが、「おめでとう」と日本の勝利を口々に祝福してくれた。
小中高とサッカー漬けであった筆者は、昔は少しだけサッカーに自信があった。そこそこの強豪校だった高校では、11人のチームメートから3人もJリーガーを輩出し、かなり厳しい練習もこなしていた。入学式の日から練習は始まり、サッカーのために越境入学してくる者も含め数十人いたチームメートは、あまりに過酷な練習のため、どんどん脱落していく。
3年生の引退まで残った同期は数少ないが、苦楽を共にしただけに高校卒業から30年以上たつ今でも定期的に連絡を取り合っている。かつてはプロの道に進んだ同期が出場するJリーグの試合観戦後に、飲み屋で再会を祝うのが常だった。それが最近では筆者のこのコラムの話を肴(さかな)に盛り上がっていると聞き、うれしい限りである。
そんな筆者としては、日本のドイツ戦の勝利は特に感慨深い。今でこそスペインのプロサッカーリーグ、ラ・リーガやイングランドのプレミアリーグが注目されているが、筆者がサッカーに熱中していた当時、Jリーグ発足直前の欧州プロサッカーの中心は間違いなく西ドイツのブンデスリーガであった。サッカー選手の留学先の定番でもあり、プロになったチームメートの中にも、高校を1年休学し、西ドイツにサッカー留学した者がいる。
レギュラーをキープするのが精いっぱいだった筆者は、サッカー留学はおろか、プロ入りは夢のまた夢だった。それでも、ドイツの著名クラブチームでのトレーニング手法や代表選手の育成方法などを本やビデオで毎日のように研究していたため、ドイツ代表への思い入れは並々ならぬものがあった。
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