ドイツの高速道路(アウトバーン)では、速度制限がない区間がある(写真:AP/アフロ)
ドイツの高速道路(アウトバーン)では、速度制限がない区間がある(写真:AP/アフロ)

 ドイツは唯一、高速道路(アウトバーン)に制限速度が設定されていないまれな国である。世界中の自動車愛好家がその性能を試しに、自国では出せない速度で走行するために訪れるなど、アウトバーン自体が、いわば一種の観光名所にもなっている。ただし、そんなアウトバーンについに全面的な速度制限が導入される可能性が出てきている。

 その要因は9月26日に行われるドイツ総選挙である。6月から7月までトップにつけていたメルケル首相所属の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の支持率は急落しており、ついに8月には大連立相手の社会民主党(SPD)に逆転され、一時期20%台を割りこんだ(9月7日時点で19%)。SPDの支持率は、選挙戦終盤に急伸し、このままいけば、シュレーダー首相のもとで戦った2002年議会選以来の第1党となる可能性が高まっている。

ドイツの政党別支持率の推移(9月7日時点)
ドイツの政党別支持率の推移(9月7日時点)
(注)左派党の政党カラーは赤色だが、SPDと区別するため慣用的に紫が利用される。
(出所)フォルザ調査より大和総研作成
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 実はこの支持率1位のSPDが、アウトバーンに時速130キロの制限速度導入を公約として掲げている。さらにSPDが第1党になった場合の連立相手の筆頭候補と目される、緑の党も時速130キロの制限速度導入を同様に支持しているのが実情である(極左の左派党に至っては時速120キロの速度制限導入を公約にしている)。

 厳密にいえばアウトバーンに制限速度が全くないというのは正確ではない。ドイツで走行したことがある人ならご存じかもしれないが、その4割は制限速度が設定されているうえ、安全の観点から時速130キロが奨励されている。ただ今回の選挙では制限速度の導入が「安全性」よりも、「気候変動対策」の観点から議論されているというのが興味深い点である。

 ドイツでは2021年5月に「気候保護法」の改正案を閣議決定し、2030年までのCO2排出量削減をEUルールの1999年比55%削減から65%削減に引き上げ、2050年までの温暖化ガス排出量実質ゼロ達成を2045年までに前倒しで達成する目標に変更した。

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