タリバンは、アフガニスタン最大のNATO空軍基地を支配下に置いた(写真:Abaca/アフロ)
タリバンは、アフガニスタン最大のNATO空軍基地を支配下に置いた(写真:Abaca/アフロ)

 アフガニスタンで20年前に政権の座を追われたタリバンは、8月に驚くほどの速さで首都カブールにまで迫り、同15日に全土を掌握した。それから月末にかけ大混乱のなかで進められた西側諸国の撤退は、同国における米国の影響力の終焉(しゅうえん)を告げるものとなった。カブール北部のパンジシール渓谷では、タリバンと抵抗組織の指導者であるアフマド・マスード氏に忠実な兵士との戦闘は続いており、双方が相手に大きな打撃を与えたと主張している。

 抵抗勢力が残るもののタリバンは、9月7日に共同創設者の1人であるアフンド師を首相代行とする暫定政権(新政府評議会)を樹立すると発表した。ただ 事実上は、タリバンの最高指導者(3代目)であるアクンザダ師が、神政トップとして最終的な権力(大統領の役割)を持つとみられている。

 現時点でタリバンは、1996年から2001年にかけてシャリア(イスラム法)を過激な形態で施行して政権を握ったときとは異なり、より穏当な統治をすると主張している。また、国際的な承認を積極的に求めていく姿勢を示しており、同国への貿易や援助が拡大する可能性を模索している。しかし欧州では、このようなタリバンの発言ではなく実際の行動を見極めて、政権の承認をするという国が大勢である。欧州連合(EU)および英国は人権が尊重され、人道支援関係者へのアクセスが無制限とされない限り、タリバン政権を認めない意向を示している。

不安が募る今後のNATO運営に対してEUは共同軍の配備を検討

 01年9月11日の同時多発テロにより、米軍がアフガニスタンで軍事行動を開始し、北大西洋条約機構(NATO)の歴史上初めて集団的自衛権が発動され、NATO同盟国軍も参加した。NATOにとっては(加盟国の)国境外における初めての持続的な作戦となった。(米国が始めた戦争でもあるため)EU加盟国の多くは駐留米軍を、テロのリスクやアフガニスタンからの移民から欧州を守る防波堤としてとらえていた。ただし、一方的ともいえるアフガニスタンからの米軍撤退に、防衛面で今後どれだけ米国に依存できるのかという懸念がEUでは再燃している。

 そのため現在EUでは、NATOとは別途、EU共同軍を創設し、国際危機に介入するための即応兵力の確立に焦点を当てた議論がなされている。つまり、EUの理念として人・モノ・資本・サービスと国境を越えた統合深化に「兵士(を共有する)」というハードパワーが加わることになる。

 EU共同軍の創設を後押しているマクロン仏大統領は、アフガニスタンからの米軍撤退を受け、NATOの戦略や秩序を再考すべきだと主張し、8月31日にオランダのルッテ首相とエリゼ宮で会談している。会談後には「欧州は安全保障および防衛に関しより大きな責任を担えるよう、必要なリソースを即応的に配備すべきだ」と共同声明で発表している。EU共同軍の規模は、戦艦および航空機による支援を受けた5000人強の部隊をわずかな時間で即応的に世界中に配備できることを想定しているという。今後は10月の外交問題評議会会合で詳細を議論した上で11月までに計画案を作成し、2022年3月までに重要防衛戦略として合意するとの期限も掲げている。

続きを読む 2/3 相互に責任転嫁しあう英国防省と外務省

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